Nagano Morita, a Division of Prager Metis CPAs

NAGANO MORITAは、プレーガー メティス米国会計事務所の日系部門です。

PEがなくても州税は課税される?Amazon FBAとネクサスの落とし穴

日系企業が米国で事業を開始する際、まず確認する税務論点の一つが、米国内に恒久的施設(Permanent Establishment:PE)があるかどうかである。しかし、米国では、連邦税と州税という二層における課税体系が存在する。連邦税では主にPEの有無が問題となる一方、州税では州との課税上の結び付きである「ネクサス(Nexus)」が、申告における判断基準となる。そのため、「米国にPEがないから、米国で申告する必要もない」と一括して判断することはできないのである。本稿では、日本法人によるAmazon FBA(Fulfillment by Amazon)を利用した米国販売を例に、連邦税と州税の重要な違いについて解説する。

A.事例:日本法人A社のFBA販売

分かりやすい事例として、日本法人A社が、日本から商品を米国AmazonのFBA倉庫経由で発送し、米国内の消費者へ販売している。

<状況>

・米国内に子会社、事務所、従業員はない

・販売方針および価格は日本で決定している

・米国Amazonが商品の保管、梱包、配送を行う

・米国Amazonの判断で商品が複数州の倉庫へ移動される

・商品が販売されるまではA社の米国内での棚卸資産である

この場合、日米租税条約上「PEがない」と認定されれば、事業利益に対する米国連邦法人税が課税されない可能性がある。一方で、商品が保管された州では、州税ネクサスが成立する可能性がある。

B.連邦税ではPEの有無を確認

日米租税条約では、一般的に事務所や支店などの恒久的施設(Permanent Establishment:PE)が米国内に存在しない場合、原則として日本法人の事業利益は米国連邦法人税の課税対象とならないのである。こうしたことから、通常のFBAでは、Amazon倉庫に在庫があるという事実のみで直ちにPEが成立するとは限らない。

もっとも、米国内における継続的な販売活動や在庫保有は、米国税法上の「米国における事業活動(U.S. Trade or Business:USTB)」に該当し、その結果、当該所得が「実質的に関連する所得(Effectively Connected Income:ECI)」として取り扱われる可能性がある。USTBとPEは異なる概念である。USTB(⇒ECI)に該当しても、PEが認められなければ、租税条約により米国連邦法人税の課税対象とならない可能性がある。

そのような場合には、Protective Form 1120-FやForm 8833の提出要否を検討することが望ましい。こうした措置を取ることにより、「国内法だけ見れば課税されそうだが、日米租税条約などの条約に基づき、課税しない・免税するという立場を取る」という条約ベースの申告ポジションを、IRSに正式に開示することができる。

C.州税ではFBA在庫がネクサスを生む

一方、日米租税条約によるPE概念の保護は、一般的に州税を直接制限するものではないと言える。なぜならば、日米租税条約は、日米両国の間の取り決めであり、多くの州はその当事者ではないため、PEが存在しないことのみを理由として、州税申告義務まで免除されるとは限らない。

FBA倉庫に保管される在庫は、販売されるまでA社の米国内における所有資産であり、その州における物理的存在(Physical Presence)とみなされる可能性がある。その結果、州によっては次の税金に関する申告義務を検討する必要がある。

・州法人所得税

・フランチャイズ税・最低税

・Gross Receipts Tax(総収入税)

・Sales and Use Tax(売上使用税)

オハイオ州やワシントン州など、州によっては、利益ではなく総収入を基準として課税されるため、赤字であっても申告または納税義務が生じることがある。

D.AmazonがSales Taxを徴収していても安心できない

多くの州では、AmazonがMarketplace FacilitatorとしてSales and Use Tax(売上使用税)を徴収・納付している。しかし、それによって法人所得税やフランチャイズ税の申告義務までなくなるわけではない。また、FBA在庫が存在しない州でも、州内売上高が一定額を超えることで経済的ネクサス(Economic Nexus)が成立する場合がある。例えばカリフォルニア州では、同州向け売上高が法定の経済的ネクサス基準を超えた場合、それだけで法人が州内で「事業を行っている(Doing Business)」と判断され、州法人所得税の申告義務が生じる可能性がある。

そのため、AmazonがSales Taxを徴収しているかどうかだけでなく、

・商品が保管された州

・商品が販売された州および州別売上高

を把握することが重要である。

E.P.L. 86-272の保護には限界がある

P.L. 86-272は、「州内を回るセールスマンが、有形の商品について注文を取るだけ」のケースを、純所得ベースの州法人税から保護する、古くからある連邦ルールである。しかし、FBAでは州内に販売者所有の在庫が保管され、その在庫から注文が履行されることがあるため、この保護を受けられない可能性が高い。また、P.L. 86-272はSales TaxやGross Receipts Taxには原則として適用されないものである。よって、P.L. 86-272による保護には限界があることに留意する必要がある。

F.実務上の対応

以上、税務上の留意点を説明した。Amazon FBAを米国販売に利用する企業は、少なくとも年に一度、

・Amazonの州別在庫レポートを確認する

・商品が保管された州を特定する

・州別売上高を集計する

・税目ごとに州税ネクサスを判定する

・USTBおよびPE分析を文書化する

・Protective Form 1120-FおよびForm 8833の提出要否を確認する

ことが望ましいと言える。

G.まとめ

Amazon FBAによる米国販売では、PEが存在しないため連邦法人税が課税されない場合であっても、州税では在庫や売上によりネクサスが成立し、申告義務が生じる可能性がある。つまり「PEがない=米国税務申告不要」とは限らないのである。「米国に拠点がない」「AmazonがSales Taxを徴収している」という理由だけでは、「申告不要」と判断するのではなく、連邦税と州税を分けて検討するべきである。特にAmazon FBAでは、PEがない場合でも州税ネクサスが先に問題となるケースが少なくないため、在庫所在地および州別売上高を継続的に把握しておくことが、実務上重要である。

<本ニュースレターは、米国における一般的な動向や情報をご案内する目的で配信している。具体的なご質問やアドバイス等は専門家に直接ご相談下さい。>