会計税務情報 2011年2月号
永野森田公認会計士事務所
2010年 米国個人税務申告ポイント解説
オバマ大統領は、2010年12月17日に一部民主党の反対を押し切り、ブッシュ減税の2年間の延長措置を定めた法案を成立させた(The Tax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act of 2010)。米国史上三番目の大型減税と言われたブッシュ減税(The Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 及びJob and Growth Tax Relief Reconciliation Act of 2003)だが、そもそもは2010年末を持って失効されるという条項(日の入りに例えてサンセット条項と呼ばれる)があった。しかし、米国の景気回復が 弱いことを理由として、オバマ大統領はこれを延長せざるを得ない状況に追い込まれた。そのために中間選挙で負けた大統領の「降伏宣言」であると、多くの民 主党議員を失望させたのである。今回は、その延長策、変更点を含む2010年度個人税務申告のポイントを解説する。
1. 税率区分、キャピタルゲインの優遇税率の維持 (Tax Relief Act of 2010)
ブッシュ政権時代、個人所得税の最高税率が39.6%から35%に下げられ、長期保有のキャピタルゲイン(Collectibles, Sec 1202 ,Sec1250を除く)の最高税率は20%から15%へ、最低税率も10%から0%に下げられた。適格配当金は所得に応じて個人所得税と同じ税率が課せ られていたが、最高税率は15%、最低税率は0%へと減税策が取られた。オバマ大統領はこれらの富裕層向けの減税措置の打ち切りを退け、2年間の延長を成 立させた。
ブッシュ減税策 ブッシュ減税策失効後 オバマ政策
税目 2010 2011 2011
個人所得税 10% 15% 10%
15% 15% 15%
25% 28% 25%
28% 31% 28%
33% 36% 33%
35% 39.6% 35%
Long term Capital Gain
Collectibles, Sec 1202 28% 28% 28%
Sec 1250 excess of Dep. 25% 25% 25%
All other LTCG 0-15% 10-20% 0-15%
適格配当課税 0-15% 個人所得税同率 0-15%
2. Child Tax Credit &the American Opportunity Tax Credit の延長 (Tax Relief Act of 2010)
下記の二つのCreditも同様に2年間の延長されることが可決された。
-Child Tax Credit: 17歳未満の子供一人に付き最大$1,000の税額控除が可能となる。尚、一定額以上の高額取得者はこの控除に制限が生じる。
-American Opportunity Tax Credit: 生徒一人当たり最大$2,500まで税額控除が可能となる。大学4年間の授業料及び関連費用に適用される。
3. AMT基礎控除額(AMT Exemption ) の変更 (Tax Relief Act of 2010)
2010年の優遇AMTの基礎控除額については、以下の通りである。
Married Filing Jointly $47,450
Single or head of Household $72,450
Married filing separately $36,225
4. First-time homebuyer credit (The Worker, Homeownership and Business Assistance Act of 2009)
2010年5月1日までに契約を締結し、2010年10月1日までの所有権の譲渡を完了した住居の購入者は、購入金額の10%もしくは$8,000(夫婦 個別申告の場合は$4,000)のどちらか小さい方を税額控除として利用できる。また、過去8年間のうち連続して5年以上、主たる住居として居住している 住居を所有し、新たな住宅を購入した場合、$6,500までの税額控除が適用される。また一定額以上の高額取得者にはこの控除に制限が生じるが、この段階 的制限の額も、調整後総所得で$125,000 ~$ 145,000(夫婦合算申告の場合は $225,000~$245,000)までに引き上げられた。
5. 標準マイレージの変更
車使用に関する標準マイレージの値は下記の通り改定された。
-ビジネスが使用目的の場合: 50 cents per mile
-病院、引越しなどが使用目的の場合: 16.5 cents per mile
-チャリティーなどへのサービスでの使用目的の場合: 14 cents per mile
6. 盗難・災害損失 Casualty and theft losses
火災、盗難、自然災害等により生じた損失で保険により補填できなかった金額のうち、一件あたり$100を差引きした合計金額が調整後総所得の10%を超える部分が控除可能。昨年は$500を超える額という制限があったが、この制限が$100に引き下げられた。
7. 国内製造控除Domestic Production Activities Deduction (the American Jobs Creation Act of 2004)
2009年までは、米国国内にて行われる製造活動に対する収入に関して、最大6%の控除が可能であったが、これが最大9%に引き上げられた。
8. 失効となるTAX Benefit
下記2つの控除に関しては今年から適用されない。
-固定資産税に関する追加の基礎控除
-新車購入に関する州売上税の控除
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更新日: 2011年02月04日