会計税務情報2011年5月号
永野森田会計士事務所
カリフォルニア州における”Doing Business”の定義変更
2011年1月1日付けで発効された、カリフォルニア州の新税法により、同年以降開始の事業年度からは、新しい”Doing Business”の定義が適用されることとなる。これにより、同州には支店は置いていないが、カリフォルニア州内に営業活動を行なう日系企業にとって は、同定義と照らし合わせ、申告義務(Nexus)があるかどうか慎重に判断しなければならない。以下、今般新しく発表されたカルフォルニア州税法の概要 である。
1.カリフォルニア州におけるFranchise TaxとIncome Tax
カリフォルニア(CA)州に対して申告・納税義務のあるC-Corporation並びに税務上C-Corporationと扱われる米国法人は、毎年 FTB(Franchise Tax Board)にForm 100を用いて確定申告を行なうこととなっている。同Formの正式名称は”California Corporation Franchise or Income Tax Return”である。 Franchise TaxもIncome Taxも、どちらも所得に対する税であるという意味では、所得税である。通常のFranchise Taxにおいては、CA州にて事業を行う(”Doing Business” in California)という行為に対する課税も兼ねているため、例えば課税所得は発生していなくても、Minimum Franchise Tax (= $800) の事業税の支払いが義務付けられている。一方、CA州内にて事業を行わないが、CA源泉所得の発生する法人については、Income Taxを払い、Minimum Franchise Tax(事業税)は義務付けられない位置づけとなる。 こうしたIncome Taxの課せられる例としては、CA州にて事業を展開しているLimited Partnership(LP)に対して、自らは同州にて事業を行っていない州外法人が、Limited Partnerとして出資するケース等が挙げられる。こうした場合、同州にて事業を行っていないのに関わらず、CA源泉所得について Income Taxが課税される。
2.”Doing Business”の定義づけ
これまで、カリフォルニア州税法においては、”Doing Business”についての明確な定義が存在しなかった。次の同税法にあるくだりが唯一のガイダンスとされてきた。
“Doing business” means actively engaging in any transaction for the purposes of financial or pecuniary gain or profit.
米国法人の活動は、こうした“Doing Business”の範疇に入るか入らないかにより、CA州のFranchise Taxの申告義務が生じてしまうのである(CA州のNexus発生)。したがって、この定義は大変重要なものである。そこで、CA州は2011年1月1日 発効の法改正にて、”Doing Business”の定義を明確化し、以下の要件を一つでも満たした法人は、CA州にて事業を行っていると見なす事と発表した。
A. CA法人である。もしくは、その事業の中核がCAに所在する。
B. CA州における売上が、(1)$500,000、(2)会社の売上全体の25%、のどちらか小さい方を超える。ここで言うCA売上には、Commission Agent等を通じての売上を含む。
C. CA州に所在する不動産、有形資産の合計が、(1)$50,000, (2)会社が所有する全不動産、有形資産の25%、のどちらか小さい方を超える。
D. CA州にて支払った年間給与が、(1)50,000, (2)会社が支払った全年間給与の25%、のどちらか小さい方を超える。
3.新法における実際の運用
これまでのCA州外法人の多くについては、古典的な連邦ルールである、Public Law 86-272(州内の営業活動については当該州法人税義務からは保護される)の理由により、CA州に対し申告書をファイリングして来なかったと考えられ る。しかし、上記BもしくはDの要件を満たすことにより、こうした法人は、今後CA州にて事業を行っていると見なされる可能性がある。ところが、2011 年3月4日にFTBは、法改正についてのガイダンスを同ホームページ上に発表し、左様な納税者に対してもPublic Law 86-272は引き続き適用される旨報告した。しかし、具体的な説明のなかでは、Public Law 86-272の適用により所得税からは免除されるものの、申告書のファイリング義務、並びに(所得とは関係ない)Minimum Franchise Tax (=$800) の支払い義務は、新たに発生することとしている。つまり、Minimum Franchise Tax(事業税)は所得税とは無関係のため、Public Law 86-272からは保護されない、という理屈である。
新法の下、既述の要件を満たし、カリフォルニア州にて新たに事業を行っていると見なされる州外の米国法人は相当な数になる可能性がある。カリフォルニア州 による”Doing Business”定義変更により、納税者の税務コンプライアンス・コストは更に増加する事と考えられる。
(注1) Water’s-Edgeの選択をしている法人は、Form 100Wを代わりに提出する。
(注2) しかしながら、もしこの州外法人がLLCに出資した場合、法人自体カリフォルニアにおいて事業を行っていなくてもFranchise Taxの対象となる為、注意が必要。
(注3) R&TC § 23101
(注4) “General Information on New Rules for Doing Business in California” http://www.ftb.ca.gov/businesses/New_Rules_for_Doing_Business_in_California.shtml にて閲覧可能。
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更新日: 2011年05月04日