会計税務情報2014年2月号
永野森田会計士事務所
2013年米国税務アップデート(個人課税偏)
今年も米国では個人タックス・リターンの季節である。2013年税法の変更点について気にする方も多いと感じる。今年はオバマケアの導入年もあり、特にヘルスケア(医療保険)に関連する税改正へ関心が集中している。同時に、選挙の度に国を二分させる、Same Sex Couple(同性夫婦)をテーマとする税方改正も注目されている。マスコミは大きく取り上げるが、これはあくまでの税法改正である。こうした数々の税法の今年もアップデートされている。今月号では、連邦およびカリフォルニア州における個人所得税の変更点等についてまとめてみた。
A. 連邦税改正
1. Health care insurance 関連–
a.国民皆保険となるオバマケアにおいては、無保険者に対してはペナルティがかかることとなっている。2014年から”minimum essential health care”に未加入の場合、2014年の個人タックスリターンからペナルティーを科せられる。(2014年3月31日までに加入すればペナルティーは科せられない)。ただし、以下例外にあたる場合はペナルティーは科せられないことになっている。
ペナルティー対象の例外:
・医療保険の個人負担分が、家族の総収入の8%を超える場合
・US Department of Health and Human Services(米国保健福祉省)からexempt(免除)と認められた場合
・転職や失業など理由により3ヶ月未満の間、保険未加入の場合
・非居住者
・宗教的な理由による場合
なお、日系企業の米国駐在者の多くは、日本の海外駐在員保険に加入している。こうした海外駐在員保険がアメリカ保険として認可されるのか、またペナルティー対象外になるかどうかは、未だ不明である(2014年1月号ニュースレター参照)。
b. Adult children(26歳以下の扶養家族)に対する保険の特例– 26歳以下の子供は、親の保険の扶養家族対象になりえる。同時に、そのAdult Childrenはペナルティーを免れる。そのAdult Childrenは、既婚者であってもカバーされる。
c. HSA (Health Savings Account)、 MSA (Medical Savings Account)、 FSA (Flexible Spending Arrangements) distributions取り崩しペナルティー増額 – HSA、MSA、FSAは、医療費に対して使う予定の投資資産である。医療費以外の目的でこれらの投資資産を取り崩した場合にはペナルティーが科される。そのペナルティーが、従来の10%から20%へと増額される。
d. FSA (Flexible Spending Arrangements)への拠出は最大$2,500までとする。
e. 高額所得者へのメディケア税(Medicare Tax)の増額。Single $200,000, married filing joint $250,000以上の賃金 (W-2収入)や自営業所得(Schedule C, E, F)に対する個人負担のメディケア税は、従来の1.45%から2.35%へ増額 。Form 8959にて計算される。
f. Net investment income tax (interest, dividend, royalties, and rental incomeなどの受動的所得) の導入。修正調整後総所得がsingle $200,000, married filing joint $250,000以上の高額所得者にかかる利息収入、配当収入、ロイヤルティー収入や賃貸収入に対し3.8%の税金が課せられる。新しいForm 8960にて計算される。またこれらはestates and trustsにもあてはまる。非居住者にはこの税金は課せられない。
g. Schedule A (Itemized Deduction)のmedical expenses deductionはAGIの7.5%から10%へ、ハードルが引き上げられる。(65歳以上の場合は2016年まで7.5%を使用できる)
h. 2014年からPremium assistance credit(医療保険援助制度)の導入 – Exchangeを通して医療保険を購入し、個人または家族所得が連邦貧困レベルの100%から400%のレベルにある場合(つまり貧困と言われる所得レベル)はHealth care premium(医療保険支払)に対する一部返金(政府援助)を、Tax creditとして連邦政府から受けることができる。
2. Same sex couples
連邦レベルでは、2013年個人タックスリターンから、Same sex couple(同姓夫婦)は、married filing joint or separateで提出することができる。一方、州レベルにおいては、13州(カリフォルニア州を含む)とWashington DCにおいてはmarried filing joint or separateで提出が可能。残りの州は、separateとしてのみ提出可能。
3. Home office deduction (自宅兼事務所)– optional safe harbor method
Safe Harbor Methodは、自宅兼事務所の経費を簡易的に計算できる方法。2013年からは、自宅兼事務所の300 square feet(約8.4坪)までは、このSafe Harbor Methodを使用出来る。つまり、square feetあたり$5を掛けて事務所経費を損金算入とする。(ただしActual method同様、Home office deductionによる最終損失を計上することはできず、net incomeまでの損金参入が許可される。)Safe Harbor Methodにおいては固定資産税や住宅ローンの利息はSchedule Aでのみ申告され、自宅の減価償却費を申告することはできない。また、Safe Harbor Method で申告する場合はactual methodで計算された過去からのloss carryoverを使用することはできない。ただし、1年間この方法で計算し、次年度からはactual methodへの変更は可能である。
B. カリフォルニア州税改正
1. Like kind exchangeにおける報告義務の発生 (CA non resident)
Like kind exchangeは、同種資産を交換して利益が発生した場合、その利益に対する課税を繰延べることのできる連邦税優遇制度である。カリフォルニア(CA)州では、州居住者から非居住者と転出することにより、実際に利益が生じたときにCA州の未実現利益を、非居住者として報告することを怠っていたケースが多く見受けられてきた。今回の改正は、こうしたケースへの対抗措置である。すなわち、2013年より、CA州ではdeferred gainを毎年申告することが義務付けられ(現時点でまだFTBはFormを発行していない)、州外でGainが実現される場合、CA州内で未実現のGainについては、CA州非居住者としてその部分は課税される。
(例)2013年カリフォルニア州居住者が購入価格$500,000のアパートを価格$1,000,000で売却しイリノイ州で$1,000,000の建物を購入しカリフォルニア州非居住者になったとする。2013年、2014年においてはカリフォルニア州に対してdeferred gainがある旨の報告をする必要がある。2015年、この建物を$1,000,000で売却した場合、2013年に発生した$500,000の未実現利益はカリフォルニア州に対して申告、納税する必要がある。
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