会計税務情報2000年12月号
永野森田公認会計士事務所
TAX SAVING OPPORTUNITIES
駐在員の税務(第2回)
c. アメリカ事業に関連しているか否か(Effectively Connected with US Trade or Business)
そ の意味するところは、アメリカ国内で継続的な、利益を目的とした行為があったかどうかという事です。アメリカ事業に関連しているか否かが重要な意味を持つ のは、それが、課税ベ-スを決定することになるからです。即ち、外国人が得た収入がこの種の活動の結果であれば、課税方式はネット課税(総収入から必要経 費を控除した後の差額)になり、それ以外であれば、グロス課税(総収入に対する一定料率の課税)となります。一般的にネット課税方式の方が、グロス課税方 式より有利だと考えられています。例えば、アメリカに貸家をもっている日本居住者は、グロス課税は避けるべきでしょう。なぜなら、不動産の賃貸で収支が黒 字になることは極めて希で、ネット課税方式をとることにより、所得税を完全に回避することができるのです。
d. ビザとアメリカの所得税
以上の通り、駐在員がアメリカの所得税に関わりを持つか否かは、税法独特の判定基準で決定される為、常識的判断は禁物です。然し、大雑把に言えばビザと税との間には、およそ次の様な関係があると言えるでしょう。(○が報告義務、納税義務があることを示しています。)
滞在目的 | ビザの種類 | 報告義務 | 納税義務 |
観光 | B2 | 註(1) | |
短期商用 | B1 | 註(2) | |
子会社派遣 | E1、J1 | ○ | ○ |
投資、子会社派遣 | E2 | ○ | ○ |
留学、研究 | F、J | ○註(3) |
註(1) 観光旅行中得たギャンブル収入が課税所得と知らず放置した為、数年後当局からの通知を受けて初めて納税に及ぶ事例が多い。
註(2) 子会社指導、得意先回りの為の短期出張が長期化し183日を超えた場合など子会社指導で米国に滞在し、その結果として、出張者が日本の親会社から給与を得 るとすれば、その所得は米国税法上 US Source Income-Effectively Connected with US Trade or Businessと解釈され課税対象となる。然るに183日以下の滞在については、日米租税条約18条により非課税となる。
註(3) 滞在期間が長期化した場合には、報告義務のみならず、納税義務も生じることがあるので注意。
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更新日: 2000年12月01日