会計税務情報2001年3月号
永野森田公認会計士事務所
TAX SAVING OPPORTUNITIES
財務会計v.税務会計(第1回)
日 本の法人税の申告書中に別表四―所得の金額の計算に関する明細書―があるのと同じで、アメリカの申告書中にもM-1という表が組み込まれています。これ は、平たく言えば帳簿上の利益と税額算定の目的で計算された利益、即ち、課税所得との差異を纏めたところです。帳簿上の利益は通常会計原則に則って算出さ れているので、これを財務会計上での利益と言い直して宜しいでしょう。財務会計(今後“会計”と表現します。)は基本的に保守主義の原則で構築されている 為、利益なり資産を控えめにする傾向にあります。それに対し、税法は徴税を目的として構築されていることから、自ずと利益なり資産を積極的に増加させる方 向性をもつことになります。そして、独自の会計理論を展開する訳で、これを税務会計(今後“税務”と表現します。)と呼んでいるのです。本稿ではこれから 数回に分けて、二つの会計主義の違いと、その税金並びに会計への影響について解説いたします。
発生主義と現金主義
一 般的に商品を販売したときの会計的解釈は、常識の範囲を出るものではありません。即ち、商品の引渡しと代金の交換が起こった瞬間に、販売側で売上が立ちま す。然し、基本的にはこうした商品と代金との交換という一見して単純な現象も、良く考えると意外と複雑な側面を持っていることに気づきます。まず、商品を 引き渡す前に代金を支払ったらどうなるでしょう。商品を掛売りしたらどうでしょう。更に、商品引き渡した後、分割で支払うことに同意した場合は?この商品 が建築物の様に作り始めて、完成するまでに一年以上もかかる場合には?更に、商品が物でなく、サービスならどうでしょうか。
大雑 把に言えば、会計的考えは経済的側面にウエイトを置いた、発生主義によって全ての取引を解釈しようとするのに対し、税務に於いては、キャッシュフローに立 脚した判断規準で線引きをする傾向にあります。即ち、税法では発生主義の他に現金主義会計の考えも導入しています。この現金主義の考えは、時として有利に 働く反面、場合によっては大いに不利な結果をもたらすことがあります。
現金主義会計の有利な事例
売上の 認識時点が現金回収時点になります。従って、会計では売上計上がなされていても、売掛金の状態であれば、税務上は売上として認識する必要はありません。売 掛金の回収を待って始めて売上が上がったことになります。よって、納税のタイミングが遅れ、税金は回収したお金の一部を充当すれば良いことになります。
現金主義会計が不利な事例
サー ビスを売る業種ではお金を先に受け取ることがあります。例えば、授業料は学生が受講する前に納付するのが普通です。会計的考えでは、学校側は授業即ち、 サービスの提供をしていませんから、売上を立てず、納付された授業料は預かり金と考えます。処が、現金主義で考えると預かりでなく、売上になります。税法 上、発生主義を選択している企業に於いても、前払い期間が翌々年に及ぶ場合には、翌々年度以降分は全額現金受領時の翌年度の売上となります。因みに、商品 代金の前受け金については、会計上の売上認識時点で良いことになっています。
(Reg 1.451-5)
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更新日: 2001年03月01日