会計税務情報2001年4月号
永野森田公認会計士事務所
輸出優遇課税制度(ETI)
かってアメリカを象徴する表現として、双子の赤字という言葉がありました。その双子とは財政と貿易のことです。処が、財政は近年顕著な改善振りで、むし ろ、その財政黒字をどの様に使うかが国家の関心事であり、前回の大統領選挙でも最大の争点となったほどでした。一方、貿易はと言えば、今の処、変化の兆し はありません。深刻な貿易赤字脱却の糸口を模索し、同時にこれまでの輸出振興策の根幹的制度である輸出専門会社(Foreign Sales Corp ”FSC”)に対する”世界貿易機構(WTO)からの批判に答える意味もあり、関連税制が大幅に改正されました。
1,Foreign Sales Corporationの廃止
既存のFSCは2001年末迄活動可
2,輸出利益一部除外制度の発足 (Extraterritorial Income Exclusion)
発効、2000年10月1日
輸出所得の15%を除外するか、輸出額の1.2%を除外するかの何れか有利な方法を選択する。(注釈1)
輸出品目は価格に占める直接原価の外国調達率が50%以下でなければならない。
解説
これまでのFSC制度では、輸出に伴う課税所得の23%をFSCにコミッションとして支払うことを認める一方で、FSCの売上、即ち、23%コミッ ションの65%を非課税にするという複雑な方法をとっていました。通常、FSCはパナマ、ケイマン諸島等の所謂タックスヘブンに設立しなければならず、そ の維持費が高額なことや仕組みそのものが複雑なことから、少なくとも小規模企業には無縁の存在でした。それに比し、新制度は別法人を設立する手間がなく、 しかも、実行税率の軽減度が最高6%程度に止まり、タックスヘブン会社とは見做されない為、実践的価値は各段に高まったと考えられます。(注釈2)
事例
優遇税制前 | ETI(15%法) | ETI(1.2%法) | |
輸出額 | 1,000 | 1,000 | 1,000 |
原価 | 500 | 500 | 500 |
経費 | 400 | 400 | 400 |
税引前所得 | 100 | 100 | 100 |
ETI | – | 15 | 12 |
ETI後所得 | – | 85 | 88 |
税額(34%) | 34 | 29 | 30 |
節税額 | – | 5(注釈3) | 4(注釈3) |
注釈1 1.2%法をとる場合は課税所得の30%が限度。
注釈2 年間輸出額が$5百万を超える企業については、外国での輸出促進条件が伴う。
注釈3 この事例では,15%法を選択する方が有利になる。
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更新日: 2001年04月01日