会計税務情報2001年5月号
永野森田公認会計士事務所
財務会計v.税務会計(第2回)
日 本の法人税の申告書中に別表四―所得の金額の計算に関する明細書―があるのと同じで、アメリカの申告書中にもM-1という表が組み込まれています。これ は、平たく言えば帳簿上の利益と税額算定の目的で計算された利益、即ち、課税所得との差異を纏めたところです。帳簿上の利益は通常会計原則に則って算出さ れているので、これを財務会計上での利益と言い直して宜しいでしょう。財務会計(今後“会計”と表現します。)は基本的に保守主義の原則で構築されている 為、利益なり資産を控えめにする傾向にあります。それに対し、税法は徴税を目的として構築されていることから、自ずと利益なり資産を積極的に増加させる方 向性をもつことになります。そして、独自の会計理論を展開する訳で、これを税務会計(今後“税務”と表現します。)と呼んでいるのです。本稿では数回に分 けて、二つの会計主義の違いと、その税金並びに会計への影響について解説しています。
関係当事者(Related Parties)
経 済活動は市場に向けて商品を提供することを究極の目的としています。市場には多くの競合相手があるため、商品の選択に当って消費者は色々な会社の様々な商 品を比較することが出来ます。会計税務のいずれにおいても、こうした競争原理による取引成立のプロセスを第三者取引(Arm’s length transaction)と呼び、価格決定の基準にしています。これと対比されるのが、関係者間取引です。関係者間取引は血縁又は資本を通して一方が他方 に強い影響力を持つと考えられる当事者間の商行為を指します。ここで二つの点に留意しなければなりません。まず、関係当事者の意味するところは会計と税務 では異なっています。次に、往々にして当事者間の取引から結果された価格は第三者間取引のそれとは大いに乖離している可能性があり、時として不公正な内容 となる可能性を秘めています。よって、会計においては詳しい取引内容の開示が求められ、税務においては第三者取引に比し不利な扱いになることが多いので す。では、会計でいう関係当事者の定義と税務でいうそれとの違いは何でしょうか。
会計における関係当事者の定義
一方が他方の意思決定を支配する関係にある当事者全てを指します。具体的には20%の資本関係にある会社、会社と役員や主要株主との関係がその範疇に含まれます。
税務における関係当事者の定義
会計上の定義に比べ、より明確に範囲が示され、しかも、時と場合によりその定義が変わりますが、IRC267(b)による定義が最も良く使われます。例えば、商品売買並びに資産譲渡に関する制限の中で使われるのはこの定義です。
a 家族 兄弟、配偶者、父母、祖父母、子供、孫(従兄弟、叔父、叔母は除外)
b 個人と株式会社 発行株の過半数を保有する個人と会社
c 親子会社 一方の会社が他方の会社発行株の過半数を保有する関係
d 兄弟会社 共通株主がそれぞれの会社発行株の過半数を保有する関係
同 じRelated Partyという言葉を使いながら、外国資本に関する報告書の中では株保有率は25%以上を指し、無形資産の外国法人への譲渡について は更に比率を下げて10%以上を指しています。更に、Related Partyに類する言葉として、Controlled Groupと Affiliated Group又はAffiliatesがありますが、いずれも資本関係が80%以上の状況を指しています。その違いは前者が兄弟会社 を含む広い概念であるのに対し、後者は連結納税グループのみに限定しています。
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更新日: 2001年05月01日