会計税務情報2001年11月号
永野森田公認会計士事務所
非営利団体と寄付控除(その1)
愈々 21世紀の最初の年も残り少なくなり、この時期ともなると会計事務所には様々な質問が舞い込みます。特に多いのが年末の節税対策であることは、想像に難く ないことでしょう。さて、今年は9月11日テロのせいか、非営利団体への寄付に関する問い合わせが幾つか見られます。そこで、今月は、寄付控除についての 纏めをすると同時に、非営利団体とは一体どういう組織なのかについて考察することにします。アメリカ社会は非営利団体の活動に支えられている分野が多く、 その仕組みを理解する事により、単なる税法の理解に止まらず、アメリカの本質に迫る事ができるかも知れません。
寄付控除
寄 付控除をとる為には、幾つかの条件を充たさなければなりません。それには大きく分けて三つあり、(1)寄付をする資産(2)寄付先の状況(3)寄付する側 と受ける側にそれぞれ課された制限について正しい理解をしなければ適切な節税策も立てられません。又、寄付控除は個人所得税並びに、法人所得税のいずれに も共通する制度ではありますが、上記条件の中で、(3)に関し両者の間に大きな隔たりがあることは認識しておかなければなりません。
法人 Federal 課税所得の10%
個人 AGI(注1)の20%, 30%, 50%
個人の限度率が3段階に分かれていますが、その理由については、後述することにします。
非営利団体の種類
非営利団体というのは、税法上その団体の経済活動の結果として生じた所得を非課税とする旨を謳ったIRC501条を参照し、IRSから非課税の承認をとりつけた組織のことで、次の通りに分類されています(注2)。
501(c)(3) 宗教、教育、慈善、科学、文化、公共の安全を目的とした組織他
501(c)(4) 公共福祉、親睦団体他
501(c)(5) 労働組合、農業団体他
501(c)(6) 経済環境改善を目的とした経済団体等
501(c)(7) レクレーションを目的とした同好会等
以上全てを含めて通常非営利団体と呼ばれていますが、寄付控除という観点からみれば、所得税上控除となるのは、501(c)(3)条で認可された団体への寄付のみで、その他の団体は非営利活動をしているとしても、そちらへの寄付は控除適格ではありません。
Public Charityと Private Foundation
同 じ501(c) (3)団体に分類されていても、その中身は更に二つに分かれています。Public Charityは教会や学校更に、広く一般の寄付によって成り立って いる組織(注3)で、その他はPrivate Foundationになり、税制面で次の様な違いがあります。
Public Charity | Private Foundation | |
納税義務 | なし | 投資利益に対するExcise Tax |
寄付控除 | 最高AGIの50% | 最高AGIの30% |
注1 AGIはAdjusted Gross Incomeを意味する。
注2 ここに列挙したものは、代表的な団体のみで、正確には他にも501(c)(1)から501(n)までの各条項並びに521(a)で定めれた多くの団体が存在する。
注3 Public Support Testによって証明されなければならない。
ご意見、ご質問は info@nagano-morita.com へ。
更新日: 2001年11月01日