会計税務情報2001年12月号
永野森田公認会計士事務所
非営利団体と寄付控除(その2)
愈々 21世紀の最初の年も残り少なくなり、この時期ともなると会計事務所には様々な質問が舞い込みます。特に多いのが年末の節税対策であることは、想像に難く ないことでしょう。さて、今年は9月11日テロのせいか、非営利団体への寄付に関する問い合わせが幾つか見られます。そこで、先月に引き続き、今月も寄付 控除についての纏めをすると同時に、非営利団体とは一体どういう組織なのかについて考察することにします。アメリカ社会は非営利団体の活動に支えられてい る分野が多く、その仕組みを理解する事により、単なる税法の理解に止まらず、アメリカの本質に迫る事ができるかも知れません。
寄付と非営利団体の関係
前 回号で解説済みの通り、寄付控除を巡っては様々な規則や制限が存在している事がお分かり頂けたと思います。大切なのは、非営利法人=寄付控除の等式は成立 しないという事です。例えば、県人会や大学同窓会などは営利を目的とした団体ではありませんが、そこに献金しても、寄付控除適格ではありません。病院が経 営難に陥り、患者から寄付を募ったとしても、寄付控除の対象にはなりません。又、学校にも営利法人と非営利法人がありますから、学校への寄付は全て控除可 とは言えません。更に、外国の慈善団体、例えば、日本赤十字社に寄付をしても、米国では控除出来ません。
こうして、一見寄付と非営 利団体との関係は複雑に見えますが、実は、簡単に整理する方法があります。非営利団体として認知してもらうには、IRSから許可を取り付けなければならな いのですが、その際、申請書として様式1023を使って許可された、所謂1023団体は控除可であり、様式1024を用いて申請の、所謂1024団体は控 除できません。つまり、控除が可能かどうかの判断は、表面的形態に囚われず、IRS1023許可法人であるかどうかを確認するのが最も単純且つ確実なので す。
10%、20%、30%、50%
寄付控除関係の解説にはこうした数字が付き物です。まず、10%は株式会社が寄付をした場合の制限で、課税所得の10%迄という意味です。その他は全て、個人が寄付をした際の限度を示しています。
50% 前月号で説明のPublic Charityへの寄付がこれに該当します。調整後所得(AGI)の50%迄控除することが出来ます。但し、値上がりし た株や土地(Capital Gain Property)をその時点での価値で寄付する場合には、次に述べる30%制限が課せられます。つまり、お金でなく、物を提供する場合、その物の取得価 格で控除を計算する場合には50%,値上がり後の現在価値で控除する場合は30%になります。
30% 同じく前月号で説明のPrivate Foundationへの寄付がこれに該当します。AGIの30%迄控除することが出来ます。更に、前出のCapital Gain Propertyを寄付する際には、制限が20%に引き下げられます。
20% 30%団体へのCapital Gain Property寄付の限度です。
以上により、年末節税策としての寄付の役割は大きく、それが同時に公共の福祉にもなるとすれば、この時期、何か手掛かりがないかどうかを一度考えるのも悪くないのではないでしょうか。
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更新日: 2001年12月01日