会計税務情報2002年12月号
永野森田公認会計士事務所
年末税対策
(財務長官更迭の意味するもの)
2002 年1 2月9日付、ブッシュ大統領はオニール財務長官に替え、スノー氏を任命した。新長官の任命に当たっては、議会承認が必要なるも、11月の中間選挙の勝利に より両議院で多数派となった共和党のバックアップを考えると、就任は間違いないものと予想されている。関係筋の話として、この人事は、景気刺激策の有力な 手段として所得税減税の前倒しや新たな税改正導入を意味するとされる。概略は以下の通り。
1、所得税率引き下げの前倒し実行
現 在の税法下では、来年2003年の税率は今年と同じで変わりません。然し、ホワイトハウスは2004年の税率引き下げ予定を一年早めることを検討してお り、そればかりか、議会には2006年の税率カットまで先取りするべきだとの考えがあるようです。今年の最高税率は38.6%ですが、今の所、 2004-5年が37.6%、2006年には35%に漸次引き下げられることになっています。こうした税率引き下げ傾向時には、古典的な節税策を用いるの が良いでしょう。まず、収入については、出来るだけ、来年に先送りにすることです。特に、サービス業に従事している人は、殆どの場合、請求書を出すタイミ ングを遅らせることで、それが可能になります。来年の税率引き下げのもう一つの意味は、控除効果が来年より、今年の方が大きいということでもあります。
2、キャピタルロス限度額の拡大
現 在のキャピタルロスの通常所得との相殺限度は1年で$3,000(Separate Returnは$1,500)で、この額は何故か、20年以上も変わっていません。 この額を引き上げることにより、国民が抱える不良投資資産の早期処理 並びに家計の改善がもたらされ、経済が活性化することを狙ったものと想像されます。因みに、この方面の税改正が法人税に及ぼす影響にも関心が高まっていま す。現法人税上は、キャピタルロス控除が全く認められていません。
3、寄付控除の拡大
慈善団体等への寄付 は、現在でも控除の対象にはなっていますが、国民の殆どは、この制度を利用できていないのが現状です。毎年提出される申告書の70%はStandard Deductionの方が、Itemized Deductionより大きくなるので、寄付をしても納税額には影響が無いのです。ブッシュ大統領はこれを遺憾とし、Standard Deductionでも慈善団体への寄付をした人には控除の上積みができるように改正し、より多くの国民が慈善活動に参画する為の動機づけを考えているの でしょう。
4、配当所得税率の引き下げ
有力なのは、配当所得を現在の通常所得税率から切り離し、長期キャピタルゲイン税率(一般的には20%)と同一とする案です。更に、一定額を除外し、非課税とする案も浮上しており、配当所得は何らかの形で、優遇される可能性が高くなりました。
更新日: 2002年12月01日