会計税務情報 2003年6月号
永野森田公認会計士事務所
2003年ブッシュ税改正
ブッ シュ大統領は、上下両院が承認した減税案に署名し、2003年5月6日付、2003年「Job and Growth」改正税法が成立しました。規模的には総額3,500億ドルで、日本の国家予算の半分ほどにもなる大規模なもので、アメリカの減税史の中でも 最大級と目されています。然し、職場の提供と経済活性をを目指す改革にしては、意外と迫力に欠ける内容となっています。
1、個人所得税減税
今回の税改正は>2001年のブッシュ減税の補足的な側面を持っています。2003年から2005年までの直近期間について、2006年に予定されていた税引き下げを2003年に前倒し実行する反面、2011年には元に戻す時限立法的性格は変っていません。
2、投資関係減税
配当所得減税
改 正の目玉はなんと言っても、配当所得への特別の配慮でしょう。配当は会社が一度法人税を払った後の金なので、これが株主の所得になった段階で再度課税され ると、二重課税となることからブッシュ政権はこれを是正し、法案作成過程では、これをS Corporationや Partnershipと同列に置く試みがなされました。然し、議会の反対もあり、後述のキャピタルゲイン税率と同じ15%(税率15%以下の納税者は 5%)とし、2008年の一年だけ、税率15%以下の納税者に限り非課税とすることで決着しました。2009年には、一般税率に戻ります。
減税の対象となる配当
配当であれば、何でも低率課税になるわけではありません。原則として、米国籍株式会社の配当金に限定されています。
キャピタルゲイン減税
これまで20%適用のキャピタルゲインは15%、10%適用は5%に置き換わります。
更に、2008年の1年間は配当と同じく、5%適用納税者は非課税となります。
2009年には、改正前の状態(20%,10%)に戻ります。
保有期間
この優遇税率を利用するには、12ヶ月超投資を維持することが条件になります。12ヶ月以内に売却すると短期キャピタルゲインとして通常所得と同じ税率が課されます。
関連事項
2003年中の株式配当所得に関しては、全て新税率が適用されますが、キャピタルゲインについては新税率と旧税率とに2分されます。新税率適用開始日は2003年5月6日です。
以上を総括すると、2003年の税率表は次の通りとなります。
独身者
所得額 |
通常所得 |
キャピタルゲイン税率 |
配当所得 税率 |
0-$7,000 |
10 |
5 |
5 |
$7,000-$28,400 |
15 |
5 |
5 |
$28,400-$68,800 |
25 |
15 |
15 |
$68,800-$143,500 |
28 |
15 |
15 |
$143,500-$311,950 |
33 |
15 |
15 |
$311,950- |
35 |
15 |
15 |
既婚者合算申告
所得額 |
通常所得 |
キャピタルゲイン税率 |
配当所得 税率 |
0-$14,000 |
10 |
5 |
5 |
$14,000-$56,800 |
15 |
5 |
5 |
$56,800-$114,650 |
25 |
15 |
15 |
$114,650-$174,700 |
28 |
15 |
15 |
$174,700-$311,950 |
33 |
15 |
15 |
$311,950- |
35 |
15 |
15 |
3、その他2003年の所得税に影響がある主な改正点
Child Tax Credit 子供一人につき$600から$1,000に増額されました。
夫婦合算申告の基礎控除が独身の2倍に増額の結果、2003年はそれぞれ、$4,750と$9,500になります。
4、ビジネス関係の減税
割増償却
2003年5月6日から2004年一杯までの機械等の固定資産については、2002年法の初年度割増し償却率を30%から50%に引き上げられました。
即時償却
2003年―2005年間に購入した機械等の固定資産については、$100,000まで全額償却することが出来ます。
留保金課税税率引下げ
38.6%の留保金課税率が15%に引き下げられました。これは、配当所得税率引き下げに呼応した措置で、2009年には配当所得同様、一般税率に戻ります。
更新日: 2003年06月01日