会計税務情報2003年7月号
永野森田公認会計士事務所
今日の日米間贈与税対策
2000 年4月1日に施行された日本の相続、贈与税改正により、バブル期に盛んに行われていた日米の贈与税、相続税の制度的相違を利用した租税回避策は過去のもの となってしまいまは今年1月の贈与税法改正により、日米の贈与税を回避しつつ、米国にいる子供に、ある程度の財産を生前贈与する道が開けました。
1、2000年4月1日改正以前の日米間贈与のスキーム
日 米間で最大の制度的差異は、納税義務をどちらが負担するかという所にあります。米国ではこれを、贈与者又は被相続人に負わせるに対し又は相続人に負わせて います。これに加え、米国では、非居住者の無形資の居住者への贈与は非課税である点に着目し、日本の親から米国に移住した子供への株、預金等の多額の資産 を無税で移転することが出来ました。
2、4月1日改正の骨子及びその影響
2000年4月1日以降、一定の条件を満たす国外財産の移転(贈与、相続)については、日本の贈与税、相続税が課されることになりました。「一定の件を満たす」とは、次の3つの条件を指しています。
A,受贈者(相続人)が、日本国内に住所を有していないこと。
B,受贈者(相続人)が、日本国籍を有していること。
C,受贈者(相続人)及び贈与者(被相続人)の何れかが、財産移転開始前の5年以内に日本の居住者であったこと。
例えば、以前は日本の親が外国の銀行に自分名義の口座を開設し、そこに資金を振り込むことで、日本国外財産を所有し、それを米国に住む子供に与えることが出来たのが、改正後は、同スキームは上記3条件に抵触するので有税になります。
3、2003年税制改正
今 年1月に施行された贈与税改正税制には、相続時清算課税制度が盛り込まれました。これは、米国の相続税、贈与税一本化制度(Unified Transfer Tax)の発想を取り入れたもので、国民経済の活性化を狙った措置と考えられます。即ち、この制度を活用すれば、親の死亡を待たずして、次の世代が無税で 財産を引き継ぎ、これを有効に使うことが可能になります。その骨子は、以下の通りです。
A,贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の子供が対象。
B,非課税限度額は25,000,000円。
C,受贈者が自己の居住用家屋の取得については、贈与者の年齢制限(65歳)が不適用。
D,同上、贈与者の年齢が65歳以上については、非課税限度は10,000,000円上積み。
(海外の居住用住宅取得については、特別の制限があります。)
更新日: 2003年07月01日