会計税務情報2003年12月号
永野森田公認会計士事務所
子会社が親会社に払う
-Management Fee-
ア メリカの子会社が軌道に乗り、利益も上がってくると、日本の親会社はそれまでの投資を回収したいと考えます。その方法としては、Management Feeの名目を取るか、又は、Management Feeと配当との抱き合わせが多いように見受けます。このManagement Feeとは一体何をさすのでしょうか。今月は、良く考えると漠然としていて良く分からない、このManagement Feeを税法、特に移転価格の観点のから分析します。
1、 Stewardship Service とManagerial Service
親 会社の子会社監督行為をさしてStewardship Serviceと表現します。親会社として、子会社の経営状況を把握し、管理、統制するのは、実は、親会社の投資を保護する為の行為でもあり、子会社は、 この役務から利するものはありません。一方、親会社の役務が子会社の利益になることも、勿論あります。経営指導、技術指導などが代表的な例です。では、日 常的に起こってくる、こうした親子間の役務の遣り取りをどのような尺度で色分けするのが良いのでしょうか。
2、分別の基準
親会社→子会社間の役務の性格を税法的に色分けするには、次の通り、独立性、監督、重複の 3つ基準を用います。
a. 独立性(Independence)子会社の立場に立った判断基準です。親会社の役務の提供が無くても、問題なく業務遂行が可能かどうかを検証します。 これが無いと子会社が困るのであれば、Managerial Serviceであり、そうでなければ Stewardshipとなります。
b. 監督(Supervision)親会社の立場に立った判断基準です。役務の提供が、親会社の立場を損なわないようにする為、即ち、その利益保護の目的をもってなされていれば、Stewardshipとなります。
c. 重複(Duplication)親会社が子会社がやった仕事を重複実行しているかどうかの基準です。例えば、親会社が子会社の決算書を分析するとしま す。もし、子会社側にその能力がないか、そうした分析をしないかという状況では、Managerial Serviceであり、子会社側にも十分スタッフがおり、分析能力もあるとすれば、重複であり、Stewardshipに類別されます。
3、税法(移転価格)考察
Stewardship については、親会社はその報酬を請求することはできません。一方、 Managerial Serviceについては、それが可能です。では、幾ら請求することができるのでしょう。答えは移転価格の基本である、第三者取引 の範囲ですが、これを算出するのは、とても骨の折れる仕事です。現実的対応策としては、実費精算が正解です。税法ではこれをSafe Harborと呼んでいて(§1.482-2(b)(3))、税務調査の際にも更正を受けることはありません。
更新日: 2003年12月01日