会計税務情報2004年2月号
永野森田公認会計士事務所
無形資産(Intangible Assets)の会計
現 代的経済の変貌を会計的に捉えるとすれば、資産の重点が有形資産から無形資産へと移行し、総財産に占める無形資産の比重が格段に高まった時代と言えるで しょう。ある調査によれば、1978では企業価値に占める有形資産と無形資産の比率は80%対20%であったのに対し、 1988年にはこれが45%対55%、1998年には30%対70%と推移したとされています。この傾向が続いているとすれば、現時点では企業財産の殆ど が無形資産で占められてしまっていることになります。今月は、こうして重要性が格段に増している、知的財産を始めとする無形資産の会計上の考え方を考察し ます。
1、無形資産の区分
一口に無形資産と言っても、その中には、様々なものが有り、商標権, パテント, フランチャイズ権, 暖簾(Goodwill)、顧客リスト等が挙げられます。SFAS142は、これをバランスシートの表示上Goodwill とそれ以外のIntangible Assets(単にIntangible Assetsと言えば、これを指す)に分けています。無形資産区分法には、これ以外にも 資産が特定できるかどうかで分ける方法や、取得方法で分ける方法があります。
a、特定可否基準 企業は、日々の事業活動を通して拡大し、市場競争力をつけていきます。 その市場競争力は企業の財産に相違ありません。然し、それは、企業の総合力の結果として生まれたものであり、数値的な把握も、経済耐用年数の合理的予測も 出来ません。 こうした特定不可能な無形資産に費やされたコストは、経費として処理せざるをえません。資産として認識される為には、少なくともコストと資産性との関連性 が明確であることが求められます。
b、取得方法基準 無形資産は、企業買収の結果として生まれる場合もあれば、企業内部開発の結果として生まれる場合もあります。前者に属するものとして代表的なものはGoodwillで、パテントやフランチャイズ権は後者の代表例です。
2、償却と減損
資 産として認識されたIntangible Assets(Goodwillを含まず)は、推定耐用年数で償却します。 GAAP上、その最大値は40年で、原則として定額法をとります。具体的償却期間の決定に当たっては、法的要因や、競争原理、全般的経済状況を勘案しま す。然し、一度耐用年数が設定されても、爾後、その推定期間が妥当でないことが判明した場合には、これを更新することが求められます。その際、計算変更の 対象となるのは、未償却金額のみで、経過部分への遡及はしません。
Goodwillについては、耐用年数の推定や定期償却をしません。関連する業務が将来資本回収できる金額を定期的に予測し、回収見込みが立たないことが判明した場合にのみ、その額を損金処理(減損)することになりました。
3、開業費、創業費関係の会計
以 上の無形資産に類似するものとして、新規に事業を始めたり、新しく会社を起こす時に発生するコストがあります。その扱いについては、SOP98-5により 発生の都度経費とする立場が明確になりました。税法の立場とは対照的で、その差異は、会計上繰り延べ資産として処理されることになります。
脚 注:無形資産に関する基本的考えは、2002年に書き換えられ、それ迄の基準だったAPB17からSFAS142に移行しました。その背景にあるのは、企 業買収に伴う連結会計の手法として、それまで多くの企業が採用していたPooling法の弊害の解消と、 Purchase法への一本化でした。上記解説は、この変更後の基本的な考え方を要約したものです。
更新日: 2004年02月01日