会計税務情報2005年1月号
永野森田米国公認会計士事務所
日米社会保障協定発効へ
昨年2月に日米両政府は日米社会保障協定に署名, 国会にても承認済みで、現在双方が実施に向けて最終調整を行っています。同協定は1)日米両国における 年金および医療保険税の「2重課税の排除」と2)年金受給資格の有無を両国の年金制度への加入期間を合算して決める、所謂「通算制度」の2本柱から成り 立っています。本欄では、今後2回に亘って同協定の適用を受ける際の留意点につき考察します。今回は「2重課税の排除」です。
「2重課税の排除」適用に関する留意点
日米社会保障協定の発効により5年未満の短期の予定で米国に派遣される日本人駐在員は、以下の条件を充たすことにより米国滞在中、米国年金と医療保険税(メディケア)が免除されます。
a 日本で引き続き社会保険加入資格を継続し、保険料を納めること。米国転勤には、(1)会社の従業員としての身分 を保持したまま米国法人に異動する「在籍出向」、又は、(2)親会社の在米支店への異動の2つのケースが想定されます。米国会社に「転籍出向」になる場合、本人の社会保険加入資格が喪失しますので、免税措置は適用されません。
b 社会保険庁から社会保険加入証明書を入手し米国での雇用者がこれを保管すること。
次に、具体的事例について検証します。
1.駐在員の米国滞在期間が5年を超えた場合。
米国において年金と医療保険税の支払いが免除されるのは、駐在予定期間が5年未満の場合に限られます。何らかの事情でそれが5年以上になった場合には、日米の社会保険庁が協議の上、最大4年(つまり合計9年)までの免税延長が認められることがあります。
2.米国駐在の繰り返し。
同一の者が5年未満の米国駐在を繰り返し、その都度免税申請することは原則的には可能ですが、それらが「日本への一時帰国を含む長期の米国滞在」と見なされた場合、免税が認められないこともあります。
3.日米社会保障協定発効時に既に米国駐在している場合。
協定発効時に既に米国駐在している場合も、協定発効日から帰国予定日までの期間が5年未満であれば、社会保険加入証明書を社会保険庁から入手することにより、米国での年金および医療保険税支払いが免除となります。
4.駐在員が米国滞在中にグリーンカードを取得した場合。
グリーンカード取得により、免除措置が自動的に解除になるということはありませんが、グリーンカード取 得により駐在予定期間が5年以上になった場合には、米国年金及び医療保険税支払いの対象となります。
5.駐在員が日米双方より給料を受け取る場合。
駐在員の給与を日本の親会社と派遣先の米国子会社双方が負担しているような場合には、原則として、日本 において、日本払い、米国払い双方の給与に対し厚生年金・医療保険が払われていなければなりません。日本払い、米国払い給与の一方もしくは両方に対し、保 険料が支払われていない場合、その給与は米国年金、医療保険の対象になります。
6.米国の制度に加入することになった場合。
5年以上の駐在予定期間で米国に赴任したり、転籍出向する場合、米国にて年金及び医療保険税を払うことになりますが、その場合同時に日本の社会保険に加入し続けることはできません。然し、国民年金制度に任意加入することはできます。
更新日: 2005年01月01日