会計税務情報2005 年4 月号
永野森田米国公認会計士事務所
非課税国際投資
長年の努力により、多くの日本企業の米国内活動が定着し、日本の親会社の世界戦略に貢献するようになりました。そうした中、米国に更なる投資を検討すると ころが少なくありません。投資の拡大は、組織の再構築を必要とすることが多く、資本関係の組み換えに発展することも稀ではありません。資本組み換えは取り も直さず、非課税株式交換の問題となります。米国企業の本邦に於ける活動においても同様の動きが見られます。今回は、組織再編と表裏一体の関係にある、非 課税株式交換について考察します。
事例(1)日本に親会社P を持つ米国法人US1 は、その子会社US2 株を株式交換により譲渡したいと考えている。US2 価値が取得価格を上回る(含み益を抱える)場合、非課税取引を目指すにはどうしたら良いか。
―解説―
上記取引を税法的に解釈すると、米国法人の所有する米国法人株式の外国法人への譲渡の課税関係となる。この分野を司るのは, IRC 367 であり、Outbound (内→外)Rule により一般的には非課税となる取引についても、原則としてこれを外国法人への譲渡即ちOutbound には適用しない。然しながら、IRC 367(a)(2)に掲げる以下の条件を充した場合には、その限りでない。
1 、株式交換によってUS1 が所有するP 株は、その総発行株数の50%を超えない。
2 、US2 は確定申告時にIRC 367(c)(6)で求められている開示を行う。
3 、US1 はP の5%株主に該当しないか、もしくは、それに該当する際には、US1 がFive-Year Gain RecognitionAgreement を確定申告書に添付すること。よって、P が5 年以内にUS 2 株を売却した場合には、課税取引となり、配当所得並びに譲渡所得を認識しなければならない。配当所得の計算はIRC1248 に基ずく。即ち、キャピタルゲインの内、内部留保金の一部又は全部相当額が配当所得となる。
上述の通り、米国から外国に流出する資産(内→外)については一般税法上非課税取引でも、課税取引とされている。上記の例では、非課税の道が開かれているが、次の事例に於いては、その選択の余地がない。
1 、親会社が日本の米国子会社の清算については、一般的には清算配当がIRC332 により非課税のところ、課税取引とされている。
2 、アメリカの親会社が含み益のある資産を現物出資した場合、一般的にはIRC351 で非課税となるところ、出資先が日本の子会社であれば、課税取引とみなされる。
事例(2)アメリカ法人P は、日本に子会社JS2 を持つ。今回、P は日本で新たに子会社JS1 を設立し、JS2 株をJS1 に現物出資したいと考えている。JS2 株の市場価値が、取得価格を上回ると仮定して、非課税取引にする方法は存在するか。
―解説―
税法的な解釈は、米国内法人の所有する外国法人株式の外国法人への譲渡に関する課税取引となる。この分野も上記事例と同じく, IRC 367 で規定されているが、上記事例とは、異なり、規制がやや緩やかな外―外取引に属する。
結論的には、事例(1)で示した条件の内3 、のみを充足すれば非課税となる。よって、本事例においては、アメリカ法人がIRS とFive-Year Gain Recognition Agreement と交わす(確定申告書に添付する)ことで非課税とすることが出来る。
因みに、外→内取引についても、同様に条件は緩和されており、以下の取引についても上記条件を充たすことにより非課税扱いになる。
1 、外国子会社の清算
2 、外国子会社が持つ資産の米国親会社への譲渡
3 、外国法人の米国法人への現物出資
注意:上記解説は、一般論的概説ですので、実際の案件については、個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
更新日: 2005年04月01日