会計税務情報2007年4月号
永野森田会計士事務所
国際財務報告基準(IFRS)の概説(2)~財務諸表の書き方
今、会計は大きな転換期を迎えている。日本の大企業に限らず、日米欧の経済活動範囲はグローバルなレベルで展開されており、研究開発や生産、運輸そして販 売の国際化と軌を一にして資金調達が国境の枠を越えて活発に展開されるという流れがその背景にある。結果として、日米欧の会計方法は、独自の立場を主張し つつも、統一基準に収斂しつつあり、近い将来において、この共通基準としての国際会計基準の採用を余儀なくされることと予想される。本稿に於いては、数回 に分けて、米国基準と対比する形で、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard-International Accounting Standards Boardによって策定された会計基準の総称)を考察することにする。今月は、貸借対照表(BS)にスポットを当てる。
1. 財務諸表の構成
Balance Sheet Income Statement SoRIE* SoCiSHE**
IFRS ○ ○ ○ ○
US GAAP ○ ○ *** ○
Cash Flow Statement Accounting Policy Notes to FS
IFRS ○ ○ ○
US GAAP ○ ○ ○
解説:
○は必要を意味する。
*Statement of recognized income and expense
**Statement of changes in shareholders’ equity
***US GAAPの Other comprehensive and accumulated other comprehensive incomeに該当
2. 財務諸表表示に於ける比較情報
IFRS では、比較情報は前期との比較の形で表示される。これは、USGAAPに於ける非公開会社の一般的な基準と同一である。これに対し、米国SECについては、BS以外は過去2期分(計3期分)と比較される。IFRSでは、BSは過去1期分のみ(計2期分)で良い。
3. IFRSでの最低限の開示項目
Assets: PPE(固定資産), Investment Property, Intangible Assets, Financial Assets, Biological Assets(動物資産), Inventories, Trade Receivables, Tax Assets, Cash and Cash Equivalents
Equity and Liabilities: Issued Share Capital and Other Components of Shareholders’ Equity, Financial Liabilities, Provisions, Tax Liabilities, Trade and Other Payables, Minority Interest
US GAAPもほぼ同じである。
4. 資産、負債の長短区分
IFRSは短期と長期の区別をするが、US GAAPでは、長短区分法を選択するかどうかは経営者の選択事項であり、仮にCurrent、Non-Currentの区分法を選択した場合、両者共に下記基準に則ることになり、IFRSおよびUS GAAPには差異はない。
4-1 Current assets、企業の通常の循環過程で販売、消費が予定されている資産、売買目的で保有している資産、貸借対照表日から12ヶ月以内に現金化される資産及び現預金。
4-2 Current Liabilities 企業の通常循環過程で決済される負債、貸借対照表日から12ヶ月以内に決済予定の負債等。
4-3 Non-Current assets, Non-Current liabilities 上記以外の資産、負債
4-4 長短混在項目 貸借対照表日から12ヶ月以内回収、決済予定と12ヶ月以降の回収、決済予定が混在している場合にについては、12ヶ月超の資産、負債を開示しなければならない。
5. 債権と債務の相殺
IFRSは、法的執行力を伴う金銭債権債務以外の債権と債務の相殺を認めない。これに対し、US GAAPは相殺範囲を拡張し、関係当事者が金額の特定が出来ることを条件として、これを認めている。
6. 少数株主持分
IFRSでは少数株主持分(Minority Interest)は資本の一部となるのに対し、US GAAPでは負債として認識されている。
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更新日: 2007年04月05日