会計税務情報2007年5月号
永野森田会計士事務所
国際財務報告基準(IFRS)の概説(3)~財務諸表の書き方
今、会計は大きな転換期を迎えている。日本の大企業に限らず、日米欧の経済活動範囲は地球レベルで展開されており、研究開発や生産、運輸そして販売の国際 化と軌を一にして、資金調達が国境の枠を越えて活発に展開されるという流れがその背景にある。結果として、日米欧の会計方法は、独自の立場を主張しつつ も、統一基準に収斂しつつあり、近い将来において、この共通基準としての国際会計基準の採用を余儀なくされることと予想される。本稿においては、数回に分 けて、米国基準と対比する形で、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard-International Accounting Standards Boardによって策定された会計基準の総称)を考察することにする。今月は損益計算書に注目する。
1. 損益計算書の事例
国際会計基準(IFRS)においては、「機能的(Functional)配列」もしくは「性質的(By Nature)配列」かの何れを選択する。どちらを選択するかについては、企業の判断に委ねられており、機能的配列主義を取るUSGAAPとは隔たりが認められる。
<機能的配列法による損益計算書の事例>
Sales
(Cost of sales)
Gross profits
Other income
(Distribution expense)
(Administrative expense)
(Other expense)
Operating income
<性質的配列法による損益計算書の事例>
Sales
Other income
Inventory changes
Purchase
Labor
Depreciation
Other expense
Total expense
Operating income
2. USGAAPによる損益計算書
USGAAP(米国での一般妥当と認められる会計基準)による損益計算書の形式には、全ての収益から機能的に分類された経費を差引き、直接、税引き前利益 を算出する方法(単段階法)と、税引き前利益に達するまでに、売上から原価を引いて粗利を算出し、更に、金融、為替取引をその他の損益に分類表示する方法 (複段階法)の2通りが在る。複段階法の方が一般的である。
3. IFRS損益計算書と最低限の開示項目
一方、IFRSでは、損益計算書の形式は企業の判断に任せ、以下に示す最低開示項目のみを指定している。
• Revenues
• Finance cost
• 持分法投資損益
• 税金費用 •純利益(損失)
• 少数株主帰属分の損益
• Operating income を表示する場合は、営業活動に関係するものであれば、固定資産売却損益など非経常的な特別損益をも、全てこれに含める。さらに、異常損益 (Extraordinary )を独立して開示することは禁止されている。(USGAAPにおいても、異常損益への計上は禁止されていないものの、極めて稀で、これに該当するのは自然 災害など、非正常的且つ非反復性の条件を備えた事象のみは適用される。)
• 機能的配列法を採用した場合には、減価償却費及び無形固定資産の償却費、人件費などの性質分類情報を注記中で開示しなければならない。
4 . 認識収益•費用計算書(Statement of recognised income and expense)
さらにIFRSでは、USGAAPにおけるSFAS130で規定するその他の包括損益(Other comprehensive income and statement of accumulated other comprehensive income)に相当する情報開示を、Statement of changes in shareholders’ equity又はStatement of recognised income and expenseで行うこととする。具体的にこの中に含まれるのは、評価損益や外貨換算損益等、未実現損益項目である。因みに、USGAAPにおいては、こ うした損益を期間損益として捉える傾向が強いのに対し、IFRSでは、BS上の株主持分および資本部の変動に傾斜している。
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更新日: 2007年05月07日