会計税務情報2007年10月号
永野森田米国公認会計士事務所
州外における販売勧誘活動とNexusについて
米国で活動している日系企業のなかで、複数の州において商品を売り上げている法人にとっては、どの州に対し法人所得税(Corporate Income Tax)申告をしなければならないか、また、どの州に対してSales & Use Taxの登録をしなければならないかを、見極める事は重要となる。米国税務において、上記の問題を論じる場合には、ネクサス(Nexus)という言葉がよ く用いられる。ネクサスとは、法人所得税の申告やSales & Use Taxの登録義務が発生した状態を表すものである。「私共の会社は、カンザス州に対してネクサスがあります。」と言えば、同会社がカンザス州において事業 を行っている為、同州に対し法人所得税の申告やSales & Use Taxの徴収・支払いの為の登録義務を有している事を意味する。今月の会計税務情報では、企業が設立州外において様々な販売勧誘活動をした場合のネクサス の発生の有無につき、4つのシナリオを用いて具体的に説明する*。( *ネクサスのルールは州ごとに異なる。簡略化の為、ここではカリフォルニア州のルールに従い説明する。)
4つのシナリオ
A州にて設立されたN&M, Inc.(仮名)がカリフォルニア州において、以下のような販売勧誘活動を行ったと仮定する。それぞれのシナリオにおけるN&M, Inc.のカリフォルニア州に対する法人所得税申告義務、Sales & Use Tax登録義務につき、シナリオ下にその説明を行う。
シナリオ1
N&M, Inc.は、自社商品のカタログをカリフォルニアの顧客にダイレクト・メールにて送付している。カリフォルニアの顧客は、A州にあるN&M, Inc.のカスタマー・センターに電話・FAX・Eメールを通じ注文する。商品は、配達業者(Common Carrier)によって州外よりカリフォルニアの顧客まで配達される。
(カリフォルニア州に対する法人所得税ネクサスの有無)無し。
(カリフォルニア州に対するSales & Use Tax ネクサスの有無)無し。
シナリオ2
N&M, Inc.は、カリフォルニア州にて販売勧誘の為の職員を数人雇用している。これら職員は自宅を事務所として用い (Home Office)、彼らの給与は源泉徴収書(W-2)にて報告されている。各職員には、N&Mより自動車が貸与されている。各職員は、販売勧誘のみ 行っている。客からの注文は、職員よりN&M, Inc.の本社に送られ、本社にて処理される。商品は、配達業者(Common Carrier)によって州外よりカリフォルニアの顧客まで配達される。
(カリフォルニア州に対する法人所得税ネクサスの有無)無し。しかし、Home Office関連経費やレント代等をN&M, Inc.が職員に支払う場合、ネクサスは発生する。
(カリフォルニア州に対するSales & Use Tax ネクサスの有無)有り。
シナリオ3
N&M, Inc.は、カリフォルニア州にて代理店(Independent Contractor)を通じ自社商品を販売している。代理店は販売のみ行い、修理、配達等のサービスは施さない。商品は、配達業者(Common Carrier)によって州外よりカリフォルニアの顧客まで配達される。
(カリフォルニア州に対する法人所得税ネクサスの有無)無し。
(カリフォルニア州に対するSales & Use Tax ネクサスの有無)有り。
シナリオ4
N&M, Inc.は、カリフォルニア州内で開催されるTrade Showに出店し、ブースにて自社商品を販売している。
(カリフォルニア州に対する法人所得税ネクサスの有無)有り。
(カリフォルニア州に対するSales & Use Tax ネクサスの有無)有り。
(補足説明)
上記シナリオ2において、法人所得税ネクサスが発生する場合、カリフォルニア州に対して法人所得税申告をする必要がある。また、カリフォルニア州法務局(Secretary of State)に対し、支店登録する必要性も考えられる。
シナリオ4において、N&M, Inc.が数年に渡って毎年8日以上Trade Showに出店する予定があり、かつ$10,000以上ブースにて売り上げる見込みがある場合には、法人所得税申告に加え、Secretary of Stateに対する支店登録が必要と考えられる。
またシナリオ4において、Trade Showへの出店が単発的な場合には、Sales & Use Tax徴収の為のTemporary Permitを予めSales Tax 当局(Board of Equalization)にて申請しておく必要がある。
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更新日: 2007年10月10日