会計税務情報2009年1月号
永野森田会計士事務所
2008年度米国税法改正のポイント解説~概説
2009年の幕が開けた。米国発の景気後退と円高が進行する中、多くの米国進出日系企業では売上げが伸び悩み、利益は圧迫される苦しい現象が続いている。 他方、連邦政府と州レベルにおいては、法人税収が減るとともに、企業の活性化および税収の確保を目的とした様々な税制改正の動きが見られる。今月は、こう した背景のなかで実施された2008年における米国の主要な税法改正(連邦、CA州)の項目のポイント解説を行うこととする。
1. 連邦税法改正-The Economic Stimulus Act of 2008
A) Section 179 の増額
Section 179 expense electionとは、事業用動産を減価償却する代わりに、取得価格を経費として取得年度に税務上一括計上出来るという制度である。機械、器具などの固定 資産を費用として、取得年度に一括損金算入できる制度であるため、その節税効果は大きい。
今回のThe Economic Stimulus Act of 2008(以下Act) の施行により、損金算入出来る上限はそれまでの$128,000から$250,000に引き上げられた。2008年中開始の事業年度内に取得された先の固定資産が対象になる。
このSection 179には、固定資産の購入総額制限があり、その年の購入総額が一定額(investment limitation)を超えると、先に述べた一括損金算入限度が”dollar for dollar”で減額される仕組みとなっている。今回の Act施行によれば、このinvestment limitationについても、$510,000から$800,000に増額された。
なお、section 179 による資産の損金算入は、事業を通じての課税所得制限にも服する。
B) Bonus Depreciationの復活
更に、会社にとって朗報なのは、Bonus Depreciationの復活である。Bonus Depreciationの利用により、機械、器具などの取得原価の50%償却することが出来る。既述のSection 179との組み合わせも可能である。
例えば、2008年中に機械設備を$500,000で購入した場合、先ずsection 179を上限まで利用し$250,000を損金算入する。そして、$125,000 (= ($500,000 – $250,000) x 50%)をBonus Depreciationとして償却した後, 残存額$125,000を通常通り減価償却することが出来る。
2. カリフォルニア州(以下CA州)税制改正
A) NOL(Net Operating Loss-累積損失)の利用停止
CA州は、税収確保の観点から、個人および企業のによるNOL Deduction(課税所得との相殺)を2008年、2009年の2年に渡り不可とした。ただし、事業課税所得が$500,000未満の納税者については適用除外となる。
また、2008年および2009年に利用停止となったNOLは、それぞれ2年および1年繰越年数が延長される。さらに2008年中に発生したNOLについては、20年間の繰越(Carryover)期間が与えられる。
B) 予定納税支払いに関する変更
CA州では、予定納税の回収を早めるための大胆な制度改正が今回行われた。具体的には、2009年1月1日以降開始の事業年度から、CA州の個人および企 業は第1回および第2回予定納税支払い時に年額の30%分を納税し、第3回および第4回については20%分を納税する事とした。なお、予定納税の期限につ いては変更はない。
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更新日: 2009年01月05日