会計税務情報2009年4月号
永野森田会計士事務所
IFRS vs USGAAP (1)
前月号においては、US GAAP(米国会計原則)について詳述した。US GAAPの特徴は条文主義である。一方、現在U.S.GAAPとの収斂化(コンバージェンス)が進行している国際財務報告基準(IFRS)は、イギリスの 「原理原則主義」を基礎としている。原則に沿う限り、各社で会計方針や会計処理が異なることも許されるのである。今月と来月の2回に分けて、IFRSと U.S.GAAPの主な相違点について再確認していくこととする。
1. Other Comprehensive Income (その他の包括利益)
包括利益(Comprehensive income)とは、企業の当期間中における自己資本に影響を及ばすすべての取引である。PLには影響を与えないが、BSの資本の部に影響を与える取引す べてを表すものである。日本の会計ではまだ馴染みはないが、Foreign currency translation adjustment(外貨換算調整金額)やUnrealized holding gains and losses on available-for-sale securities(売却可能有価証券の未実現損益)などが含まれる。
IFRSの推進母体であるIASB(International Accounting Standard Board)においては、包括利益は一つの独立した、重要な業績指標となっている。一方、USGAAPにおいて包括利益は、PLを単に補完するものとして 扱われている。
<IFRS>
Comprehensive income はStatement of comprehensive income で示される。
< USGAAP >
以下のうち1つ
Format
1. Statement that reports results of operations
2. Separate statement of comprehensive income
3. Statement changes in equity
Format1.または2.が推奨される。
2. Events after the Reporting Period (後発事象)
貸借対照表日から以下の日までに発生した事象で、次期以後の財政状態および経営成績に影響を及ぼすものを後発事象という。
<IFRS>
Events after the reporting period
Before the “authorization for issue” of financial statements
取締役会が財務諸表の公表を承認した日まで
< USGAAP >
Subsequent events
Before financial statements are issued
財務諸表が公表された日まで
3. INVENTORIES(棚卸資産)
通常の製造・営業活動において、継続的に費消される資産であるため、その評価基準及び評価方法が期末の貸借対照表計上額を決定するために重要となる。
<IFRS>
棚卸資産原価配分方法においてLIFO(後入先出法)は認められない。
棚卸資産の評価減の戻し入れは認められる。
< USGAAP >
LIFOは認められる。
棚卸資産の評価減の戻し入れは認められない。
4. Capitalization of Interest Cost (利子費用の資産化)
適格と認められた資産の取得にかかった借入費用は、決められた範囲で資産化できる。
<IFRS>
資産化できる範囲は、
実際借入費用(支払利息) - 借入の一時投資による収益(受取利息)
< USGAAP >
受取利息は支払利息と相殺できない
5. Impairment of Assets (資産の減損)
資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態である。そのような場合、以下のようなテストをして資産の帳簿額価を減額する処理を行う。
<IFRS>
資産に減損の兆候があれば、減損テストを行う。
以前に認識した減損の戻し入れは許される。
< USGAAP >
資産に減損の兆候があれば以下の2つのテストを行う。
①資産の帳簿価額が回収不能 (回収可能性テスト)
②帳簿価額が公正価値を上回っている (減損テスト)
以前に認識した減損の戻し入れは許されない。
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更新日: 2009年04月04日