会計税務情報2009年5月号
永野森田会計士事務所
IFRS vs US GAAP (2)
去る2009年4月2日、ロンドン近郊で開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議において、金融システムの強化に関する宣言が採択さ れている。その一貫で、国際的な金融に関する基準(12の主要な国際基準及び規範を含む)を導入していくことが同意された。当然ながら、こうした基準の中 には国際財務報告基準(IFRS)と国際監査基準の内容に関する事項が含まれている。このような世界的規模での会計基準におけるIFRSとの収斂化が背景 に存在する。今月は、前月に引き続き、IFRSとUS GAAPの主な相違点について再確認していくこととする。
6. Leases (リース)
IFRSとUSGAAPどちらにおいても、ファイナンスリース(キャピタルリース)とオペレーティングリースに分類される。しかしその分類基準には相違がある。
ファイナンスリース(US:キャピタルリース)について見てみる。
< IFRS >
Finance lease; 所有権に付与されるリスクと利益を実質的に全て享受できるリース。
< US GAAP >
Capital lease; 以下のうちどれか1つでもあてはまるリース
(1) リース期間終了後の所有権移転
(2) バーゲンパーチェスオプション
(3) リース期間が経済耐用年数の75%を超えていること
(4) リース料合計額の現在価値が資産の市場価値の90%を超えていること
7. Completed contract method (工事完成基準)
建設業や造船業のような受注によって生産を開始する長期請負工事に関する収益認識の一つの方法である。工事が完成し、建物や船舶等の完成品を相手方に引き渡した時点で、工事収益を計上する。従って、完成途上の期間には工事費用のみが計上される。
< IFRS >
工事完成基準は認められない。
< US GAAP >
工事完成基準は認められる。
8. Deferred tax assets (繰延税金資産)
繰延税金資産は、会計と税務で費用化の一時差異や繰延欠損金等に係る税効果、すなわち将来の税金支払を減少させる影響を資産として表している。従って、繰延税金資産は、将来の期間において実現可能な額で評価されることとなる。
< IFRS >
繰延税金資産は発生可能性がProbable(70-80%)で将来の税効果が見込まれる範囲で認識する。
< US GAAP >
起こる可能性と起こらない可能性を比較して、可能性の高い方(すなわち50%超)を判定基準とする。Valuation allowanceにより実現の可能性を調節する。
繰延税金資産を短期・長期に分類する(IFRSではしない)。
9. Business combination (企業結合)
国際的なM&Aが頻繁に行われる現在、企業結合における取得企業の会計処理における両者の原則は、会計基準の収斂化(コンバージェンス)の結果、 相違は見られなくなった。ともにAcquisition method (取得法)を採用している。Pooling method(プーリング法)は使われていない。
< IFRS >
Acquisition method (2008年1月改定)
< US GAAP >
Acquisition method (2007年12月改定)
10. Minority interests (少数株主持分)
現在の米国における買収、合併に伴う連結会計基準は、2001年に導入された米国会計基準SFAS141に準拠している。そして従来、少数株主持分の認識について、IFRSは資本、USGAAPは負債という立場をとってきた。
しかし、2007年12月のSFAS141の改定において、USGAAPにおいても、少数株主持分は資本の一部となる。USGAAPが国際基準に歩み寄った形となった。新基準は2009年より適用となる。
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更新日: 2009年05月04日