会計税務情報2010年4月号
永野森田会計士事務所
オバマ医療保険改革のインパクト
総額1,000億ドルに近い予算を必要とするオバマ政権の看板法案が、議会を通過し、大統領の署名を経て愈々施行される事となった。2010年3月23日 のことである。この医療保険制度が目的とするのは、推定32百万人の比較的低所得層の米国民に医療保険を提供することにより、国民皆保険制度を確立しよう とするものである。完結するまでに10年の壮大なプロジェクトであるだけに、ビジネス界への悪影響を心配せざるを得ない。事が始まるのは、2013年から と3年近く先の話ではあるが、余裕をもって新制度への準備をしたいものである。
1. 全体的なスキーム
新制度のキープレーヤーは、新設される健康保険取引所(Health Insurance Exchange)とIRSである。取引所は、州毎に設置されて、無保険者に対し保険会社を斡旋する役割を果たす。一定所得水準以下の家庭に対しては、こ の取引所を通して補助金が支給される。小規模企業向けには、特別の健康保険取引所が別途設置されるようである。IRSは、このプログラムに必要な金を調達 する役割を担っており、裕福層への増税と新制度の直接的受益への特別課税等による辻褄合せの役割を担う。
2. 個々人の保険加入義務
2014年から全ての人(Citizen, Legal Resident)本人並びに扶養家族全員が健康保険を持つことが義務づけれる。違反した場合の罰金は家族一人に付$695(最大$2,085又は家族全員の所得の2.5%)と定められた。
3. 雇用者の義務
表立った雇用者への義務は明記されていないが、新制度下では、実質的に50人以上を雇用する企業は従業員全員に保険を提供しなければならなくなる。仮に、 従業員が一人でも上記取引所の助成金を使った保険購入をしたことが分かると、従業員一人当たり年$2,000のペナルテーが課せられる(免除既定あり)。 従って、低賃金労働者を雇用している会社については、従業員の健康保険加入状況について、定期的な見直しが求められる。又、従業員数計算方法にも留意しな ければならない。
4. 高額所得者増税
健康保険導入資金源として、米国税制史上初めて、高額所得者の投資収入(配当、利息、キャピタルゲイン)に対する3.8%の給与税が課せられることとなっ た。給与所得者から天引きされ、更に、雇用者からも同額の拠出を求めるMedicare Taxと同じ税である。$200,000以上の所得のある人(既婚者は$250,000)が対象となる。又、給料についても同様の措置を講じることとな り、$200,000(夫婦合算は$250,000)超の給料については、現行天引率が1.45%の所、0.9%加算され2.35%となる。
5. その他の資金源
1000千億ドル(日本円換算90兆円)ものコストをカバーする為、他にも次の分野からの資金手当てを予定している。
•高額医療保険への課税 •医療機器メーカー •輸入業者への課税 •薬品メーカー
•薬品輸入業者への課税 •健康保険会社からの免許料徴収等
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更新日: 2010年04月04日