永野・森田米国公認会計士事務所では、日米会計、経理、簿記、監査、税務、など日系企業の
米国進出ならびに米国での事業拡大に貢献してきた米国公認会計士事務所です。

JAPANESE / ENGLISH

採用情報 / お問合せ

トップページ > ニュース一覧

収益認識の新基準 (ASC 606) 2019/09/04

会計税務情報 2019年9月号
永野森田会計士事務所

 

収益認識の新基準 (ASC 606)

 

米国会計原則(USGAAP)に導入された収益認識の新基準が、いよいよ2018年12月15日以降から開始される決算期から非上場会社にも適用される。商品供給を一回毎に行っているビジネスは影響を受けにくいものの、例えば、一年以上にわたりサービス供給を慣行としてきた取引には、直接的な影響があるものと予想される。又、この新基準によれば、Gross vs. Netの収益計上判定がより明確になる。

 

 

A. 新しい収益認識基準の特徴

新基準の最大ポイントは、財とサービスの何れをもAsset(以下Assetは財とサービスの何れも含む)と考え、これまでは、その法律上の”所有権” (Title)移転のタイミングによって収益を認識していたのに対し、その判定基準が”支配” (Control)移転時点にシフトした点である。このControlは、Titleをも含めた包括的な概念からなるとされ、ASC 606によれば、このControlの確認手続きは次の通り5段階から構成される。

 

 Step 1 Identify the contract <契約の特定>

  1. 契約とは、書面に限らず口頭又は商慣習も含めた当事者間の合意を意味する。ただし、書面契約に対して口頭により別条件を提示した場合、原則として書面の方が重視される。(ASC606-10-25-1)
  2. 同じ顧客に対し複数の契約が存在する場合、それらの契約を一つと看做すかどうかの検証をすることになる。(ASC606-10-25-9) 例えば、2つの契約があり最初の契約が履行されることが2番目の契約の前提条件となっている場合には、この2つの契約は一つと看做すことになる。

Step 2 Identify performance obligations <履行義務の特定>

  1. 一つの契約は必ずしも単一の取引から成っているわけではなく、それぞれが独立した複数の履行義務から成り立っている場合もある。(ASC606-10-25-14)
  2. 逆に、実質的に同一の財またはサービスを一定期間同じ移転パターンで連続的に顧客に移転する場合、その一連の財またはサービスを、単一の履行義務とするする場合も考えられる。(ASC606-10-25-14)

Step 3 Determining the transaction price <取引価格の決定>

価格の算出に当っては、次の要件を考慮する。(ASC606-10-32-1&2) 

  1. 価格は請求権に基づくものであり、回収の可能性は考慮しない。 
  2. 不確定対価 (値引き、リベート、返金、クレジット、インセンティブ、ペナルティー等)については、合理的な推定値を用いる。 

Step 4 Allocating the transaction price to performance obligations <取引価格の履行義務への配賦>

上記Step3で算定された取引価格を、独立販売価格(Standalone Selling Price)基づいて比例配分  する。独立販売価格とは、契約において約束した財またはサービスを単独で顧客に販売する場合の価格である。(ASC606-10-32-31) 

 

Step 5 Recognizing revenue when the entity satisfies a performance obligation
<履行義務を果たしたときに収益を認識する>

既述の通り、収益認識のタイミングはコントロールの移転である。新基準で重要視しているのは 売主のコントロールではなく、買主がそれを得た時点であり、その時をもって契約上での義務が履行され、従って、収益認識に至る。ASC606-10-25-30によれば、次のような事象はコントロールの移転を示唆しているとされる。

  1.  売主がAssetについて支払いを受ける権利を獲得する。
  2. 買主がAssetの法的所有権を獲得する。
  3. 買主がAssetを物理的に占有する。
  4. 買主がAssetの所有に伴う重大なリスクを負うと同時に経済的価値を獲得する。
  5. 買主のAssetの承認、検収が完了する。

 

 

B.  具体的な論点

新基準は、その概念の理解の為に次のような具体的な事例を用意している。

 

1. 保証サービス (Warranty)

保証サービスは、Assetとは別に購入するオプションの有無により計上する。

  1. Warrantyをオプションではなく自動的に付与する場合
    Assetと同じ時期の履行義務とみなし、商品供給と同じタイミングで収益認識する。一方、製品保証費用 Warranty Expenseを見積もり、Warranty Liabilityを計上する。
  2. Warrantyをオプションとして付与する場合
    Assetとは別の履行義務とみなし、Deferred Incomeを計上、保証の期間にわたり売上げ計上する。

2. 請求済未出荷販売(Bill and hold arrangement)

  1. Bill and hold arrangementとは、企業が顧客に製品について代金を請求したが、商品自体を将来のある地点まで保管しておくことである。(ASC 606-10-55-81)
  2. 未出荷は、買主にコントロールが移転していない可能性を示唆するものの、その他の要因を考慮した上で、その移転が確認されれば収益を認識する。(ASC 606-10-55-82)
  3. 収益を認識した後、その他の履行義務(保管費用等)がないかを検証、取引価格を按分する。(ASC 606-10-55-84)

3. 委託販売 (Consignments) 

委託販売においては、一見して商品のコントロールは委託者(Consignor)の手を離れ、受託者(Consignee)に渡っているように見えるが、新基準では委託販売自動的に収益認識されるのか。
ASCはこの点について次のように解説している。(ASC 606-10-55)

  1. 委託者は受託者に商品を引き渡す時点で受託者に対して商品を第三者に引き渡す義務を負わせるか又は返還請求権を保持している状況であれば、Controlを喪失したことにはならない。
  2. 受託者が、無条件に商品の対価を支払う義務を負わない場合も、同様の扱いとなる。

4. 売上額の計上基準(グロス vsネット)

売上げを上げる際、PrincipleかAgentにより、GrossかNetを計上するという論点である。PrincipleかAgentを区別する尺度としてControlの概念が新しく付け加えられている。

  1. 顧客に移転する前の約束された財またはサービスを支配(control)している場合、企業 はPrinciple(本人)である(ASC606-10-55-36-37)。 Principleの履行義務を果たした場合、見込まれる対価の総額(gross)を収益として認識する。
    PrincipleのControlの指標としては以下3つが挙げられる
    1. 指定された財又はサービスを提供する主たる責任があること  
    2. 在庫リスクがあること
    3. 指定された財又はサービスの価格を設定する権利があること  
  2. 第3者による財またはサービスの提供を手配することのみが履行義務である場合、企業は取引のAgent(代理人)である(ASC606-10-55-38)。 Agentの場合、履行義務を充足した時、見込まれる手数料(Net)の金 額で収益を認識する。

以上新収益基準について概要のみを解説した。米国進出企業としては、新しい収益認識基準についての基本的枠組みを理解の上、5 Step Processについてドキュメントの必要性にも留意されたい。

 

********

< Wayfair, FDIIと移転価格コンサルティング | 業務提携のお知らせ >