Nagano Morita, a Division of Prager Metis CPAs

NAGANO MORITAは、プレーガー メティス米国会計事務所の日系部門です。

連邦政府、紙の小切手に終止符‐電子決済一本化へ

アメリカ政府で長年にわたり使われてきた紙の小切手が、ついに姿を消そうとしている。2025年3月25日、トランプ大統領は「Modernizing Payments to and from America’s Bank Account」と題する大統領令14247号(EO 14247)に署名した。これにより、2025年9月30日をもって小切手や郵便為替といった紙ベースの決済は原則廃止され、すべての連邦政府取引が電子決済へと切り替わる。その目的は、時代遅れとなったアメリカにおける紙の決済手段を排し、効率と透明性を高め、金融取引をスピード化することだ。しかし、この「デジタル・ファースト」指針は、米国内に銀行口座を持たない外国企業―特に日系企業―に実務上の大きな波紋を広げようとしている。今回は、本大統領令の概要と、実施期限である2025年9月30日の前後に検討すべき事項を概説する。

A. 大統領令14247とは

2025年9月30日以降、すべての連邦政府機関は、限られた例外を除き、社会保障給付、税金還付、ベンダーへの支払い、政府内送金などにおいて紙の小切手を発行できなくなる。代替手段として、各機関は以下の電子決済手段を利用する。

<電子決済手段>
口座振替(銀行振込)
デビットカードおよびクレジットカードによる支払い
デジタルウォレットおよびリアルタイム決済システム

また、本大統領令は、連邦政府への支払い(税金、手数料、罰金など)についても、可能な限り電子的に処理することを義務付けている。米国財務省は、最新の決済システムへの集約的なアクセスを提供するとともに、物理的な金庫サービスを段階的に廃止することで、この移行を支援する方針である。

B. 例外と公平性の考慮

連邦政府は、アメリカ・ファーストならぬ「デジタル・ファースト」指針を推進する一方、すべての人が銀行サービスに平等にアクセスできるわけではないことも考慮している。そのため、以下の場合には例外が認められる。

<例外対象者>
a. 電子決済システムにアクセスできない個人
b. 緊急の支払いで電子送金が困難な場合
c. 国家安全保障または法執行関連の取引
d. その他、財務省が適切と判断するケース

これらに該当する受取人には、代替の支払い方法が提供される。

C. 日系企業への影響

2025年9月30日以降、原則としてすべての連邦政府による支払い(還付金、給付金、業者への支払い等)および入金は電子送金に一本化され、小切手による入出金は廃止される。電子送金の手段としては、銀行口座への直接振込、プリペイドカード、デジタル決済の利用が示されており、各連邦機関はこれら手段への移行を進める義務を負う。米国に銀行口座を持たない日系企業にとっては、特に還付金などの受け取りにあたり、受取口座として米国銀行口座の開設が必要となるケースが増えると見込まれる。

D. まとめ

大統領令14247号は、米国政府の支払い処理方法を大きく転換し、紙の小切手を廃止して電子決済への移行を加速させるものである。これにより効率化が期待される一方、米国に銀行口座を持たない日系企業にとっては、還付金や契約代金の受け取りに支障が生じる可能性がある。そのため、2025年9月30日以降を見据え、米国内銀行口座の開設準備を早急に検討することが求められている

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