Paycheck Protection Programアップデート情報

会計税務情報 2020年5月8日号
永野森田会計士事務所

Paycheck Protection Programアップデート情報

債務免除を可能とする公的ローンPaycheck Protection Program(PPP)は、第2ラウンドを迎えている。第1ラウンドの予算($349 billion) はあっという間に枯渇したものの、第2ラウンドの予算($310 billion) はより長く続くのではないかとメディアから憶測も流れている。申請も殺到しているが、未だ受け付けている米系銀行も存在するようだ。すでにPPPローンをApproveされた企業からは債務免除に関する質問が出ており、これに関してAICPA(米国公認会計士協会)から連邦政府宛に意見書も提出されている。PPPローンに関するアップデート情報を追加する。

 

1. PPPローンの資格要件

PPPローンの資格条件として、SBAの規定する「従業員500名以下」ルールが存在する。これにはAffiliation ruleがあり、資本的・経営的に結びつきの強い会社は、500名ルールにその会社の従業員数をカウントしなければならないとする(注:ホテル、食品関係等、特定業種を除く)。これに関して、海外関連会社(foreign affiliates)の従業員を、このカウントに入れるべきか否かについての議論があった。しかし、SBAは5月6日付けに発表したFAQ#44において、500名以下の計算には、申請会社の従業員と米国及び海外の関連会社(Affiliates)のすべて従業員(all of its employees)を”Must count“しなければならないと、回答している。

さらにPPP申請者側の要件として、会社オーナーでありかつ米国籍または永住権保持者を、要求する銀行も報告されてる。これに関しては、外国籍企業(日本親会社)オーナーシップをPPPの申請対象から排除するという規定は存在しない。実際、日本親会社の米国子会社でもPPPローンを申請し、既に受け取っている会社もある。

 

2. 債務免除額の算定

銀行よりPPPローンをApproveされてから、企業は10日以内にローンを振り込まれる。重要ポイントとしては、ローン受領した時点から、8週間(8 week covered period)において、従業員給与、地代レント、不動産ローン利息返済、ユーティリティ(水道光熱、電話、ケーブル、インターネット、e-fax費用)に関する支出額が、債務免除の対象可能額となる。このなかでも従業員給与額は、免除額全体の75%以上を占めなければならないことになっている。いうまでもなく、十分な従業員給与額を確保することが、債務免除の要となる。

【債務免除額の減額】

一方、債務免除額の上限を低くするという制限規定も存在する。雇用人数の減少割合および給与支払の減額である。

A. 雇用人数の減少割合
雇用人数の減少割合により債務免除額は減額される。債務免除の計算根拠となるのは、8 week covered periodである。その期間 における月平均FTE雇用人数(Monthly Average Full Time Equivalent (“FTE”) Employees for the Covered 8 Weeks)が、コロナ前の平均雇用人数の基準(以下a.もしくは b.)と比較して減った場合、その減少割合に応じて、債務免除額も同じ割合だけ減額されるというしくみである。

<コロナ前の平均雇用人数の基準>
Option a. Monthly Average FTE’s for the period February 15 to June 30, 2019
Option b. Monthly Average FTE’s for the period January 1 to February 29, 2020
(注:債務免除を多く取れる方を選択できる)

すなわち、ローン受領から8週間、この期間における平均雇用人数が、コロナ前の平均雇用人数よりも少なくなっていればその減少割合分だけ、債務免除額(全額)も減額される。裏を返せば、この8週間の期間、FTE雇用人数をコロナ前の水準に戻すインセンティブが働くようになっている。

この点、一旦解雇した従業員をPPPローンを受けた後に呼び戻そうと再オファーを出したものの、拒否されて戻ってこないというケースもある。こうした場合、その再オファーと元従業員の拒否をドキュメントすることにより、債務免除の減額を避けられる(ただし拒否をした元従業員は、失業保険受給を停止される)。また元従業員ではなく、別の新しい従業員を雇用しても良い。

また、企業が、2020年2月15日から2020年4月27日の間にFTE雇用者数を減少してしまった場合においても、2020年6月30日までに雇用者人数を元の水準(2月15日)までに戻せたら、同期間における雇用者減少について、債務免除額の制限計算に入れなくても良いとしている。

なお、このFull –Time Equivalent(FTE)の定義については、CARE Actでは明確にされていない。便宜上は「月30時間以上働く雇用者を1人とカウント」と考えられている(Affordable Care Act定義)。

B. 給与支給の減少額

給与支給の減少額により債務免除額は減額される。具体的には、2020年第一四半期(1月~3月)の給与水準と比較して、この8 week covered periodでの給与額が25%超の減額をマークした従業員給与につき、これら25%超の減少額合計額が、債務免除額(全額)より減額される。ただし、この減額計算のなかからは、2019年中、年間給与額$100,000を超える従業員給与分については除外される。

以上から、

債務免除額の減額 = A.雇用人数の減少割合額 +  B.給与支給の減少額

と計算される。ただし、2020年6月30日までにFTE雇用人数および給与支給額を、第一四半期水準までに無事戻せたら(雇用数の減少および給与額の減額が2020年2月15日~2020年4月27日に起こった場合)、上記の二つの制限規定は、解除される。したがって債務免除手続きは6月30日まで待って行うべきである

要約すると、PPPローン受領後は、コロナ前までの雇用者数、給与額に戻すということが、債務免除を受ける観点から賢明と言える。

債務免除されないローン部分については、そのまま2年間の1%低利子のローンに移行される。その後のローン用途についても、従業員給与などPPP目的に沿った内容でなけばならない。

 

3. 債務免除申請時の書類

8 週間 covered period 後、90日以内にcovered periodにおける免除可能支出(従業員給与、地代レント、不動産ローン利息返済、ユーティリティ)を証明できる書類を、免除申請書(現時点は未発表)とともにSBAに提出する。
 
【提出書類】
a)  Payroll:給与情報(FederalおよびStateの四半期給与報告書、ペイロール詳細、2019年中に$100k超の給料を得た職員)
b) Health Insurance Premiums:会社負担の従業員健康保険料金の明細
c)  Retirement Plan Contribution: 会社負担の退職金給付(401(k)など)の明細
d) Rent/Lease Payment:地代レントや不動産ローン利息返済の明細
e) Utility:水道光熱費に加え、電話、ケーブル、インターネット、e-faxの支出明細

実務的には、ローン受領ともに8 week covered periodにおける免除可能支出をまとめて別口座にて管理することが望ましいと言われている。

 

4. 税務上の取り扱い

CARES Actでは、債務免除額については連邦税務上、非課税扱いとしている。ただし、非課税ファンドから得た資金支出については、原則として損金算入されるべきでないという税務上の考え方がある。そのため、IRSからのガイダンスがない場合、債務免除の恩恵を受けているPPP関連の支出については、所得税上は損金算入が否認され、結果的には税務上効果は相殺されるのではないかと、会計士業界では心配されている。なお州レベルではまだ指針は出されていない。

 

5. AICPAの意見

AICPA(米国公認会計士協会)では、4月28日付けに連邦政府に対する意見書を提出している。その中で、8 week covered period開始をローン受領時点から固定するのではなく、ロックダウン(自宅待機令)後からでも covered periodを開始できるように、柔軟にcovered periodを選べるようにすべきだと主張している。ホテルやレストランなどは、現下ロックダウン状況においては、再雇用しても市場ニーズはなく、せっかくの再雇用も時間と費用だけ無駄になってしまうのではないかという理由である。PPPの制度自体が非常にスピーディーに出来きたためか、こうした点も今後修正される可能性がある。

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