新型コロナウィルス経済救済法(CARES Act)

会計税務情報 2020年4月1日号
永野森田会計士事務所

新型コロナウィルス経済救済法(CARES Act

 

新型コロナウィルスによる未曾有の経済危機に対抗するため、2020年3月27日、トランプ大統領は新型コロナウィルス経済救済法Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security (CARES) Actに署名した。救済総額は、$2 trillion(約220兆円)と桁違いのもので、史上最大規模とも言われている。3月20日に著名されたFamilies First Coronavirus Response Actに引続き、新型コロナウィルスで甚大な被害を受けている個人、企業を対象に、幅広い救済策を講じるのが目的だ。以下その概要である。

 

1. 個人への救済措置

現金給付 Cash Rebate

調整後総所得(AGI)が$75,000以下の単身個人については$1,200、$150,000以下の夫婦合算については$2,400の現金給付を連邦政府より受ける。AGIがこれら所得額を超える単身個人・夫婦合算については、超過額$100につき支給額$5を減額する。結果的には単身個人$99,000もしくは夫婦合算$198,000のAGIで給付額ゼロとなる。計算根拠となる調整後総所得は、2019年個人申告額を基本とする。未だ申告していない場合、2018年個人申告書をベースとする。Social Security Numberを保持しているUS Resident Statusが条件となる。estate/trustやother dependentは対象外である。現金給付は小切手で受け取れるが約5ヶ月もかかる可能性があり、支給をスピーディーにするため、IRSでは銀行口座へのDirect Depositを可能とするWebsiteを開発中とのことだ。

年金プランからの引き出しペナルティー免除

コロナウィルス緊急措置のため、個人が年金プランを取り崩した場合、$100,000までの取崩し額は10%early withdrawal feeを免除する。免除期間を2020年の終わりまでとする。さらに取り崩した年金額については、通常は個人の所得税の対象となるところを、3年以内に年金プランに払い戻せば、tax-exemptとする。

学生ローンの返済猶予

連邦の学生ローンは60日間、ペナルティーなしの返済猶予期間を与える。雇用者が従業員の学生ローンを代わって返済した場合、支払利息の$5,250までは、従業員側にとっての非課税扱いとなる。

公認慈善団体への寄付金控除

公認慈善団体への寄付活動を促す目的から、2020年の個人所得税申告においては、寄付額$300までをAbove the line deductionとする。これは個人所得税計算におけるBelow the line deductionであるStandard DeductionもしくはItemized Deductionとは無関係に適用できるため、寄付金$300を、直接Incomeから控除できる。

 

2. 企業への救済措置

企業ローン

Small Businessに対して$350 Billionの救援策を講じる。内容としては、連邦政府の保証するPaycheck Protection Program、Emergency Economic Injury Grant、SBA (Small Business Administration) Loanである。Paycheck Protection Programは、今回コロナウィルスにより被害を受けた事業を対象としている。救済ローンを、従業員給料、不動産ローン、家賃に充てた場合、債務免除の対象となる。

雇用維持クレジット

営業活動を一時的中断せざるを得ない企業は、その期間でも従業員を引続き雇用を維持した場合、従業員給与額の50%相当部分については、従業員社会保険税の会社負担部分から相殺(クレジット)できる。クレジット額は、従業員一人につき年間$10,000を上限とする。

従業員社会保険税の会社負担部分を納税猶予

 従業員社会保険税Social Security Taxの会社負担部分については、2020年12月末までの納税額50%部分を、2021年12末まで納税期限を延ばす。さらに、残り50%については、2022年12月末までに納税期限を延ばす。会社側としては、全給与額の約7.65%相当の納税支払を、遅らせることができる。また個人事業主の負担する自営業税Self Employment Taxについても、その半額について、同様に納税期限を引き延ばす。

NOLの100%課税所得控除、過去5年間Carryback

トランプ税制改革(Tax Cuts & Jobs Act)では、2018年以降に発生するNOL(繰越欠損金)控除については、課税所得に対して80%を上限とし、また残りNOLはCarrybackはできない、という制限が設けられていた。今回の措置により、2018年から2020年の間に発生したNOLは、課税所得に対して100%相殺できるようになり、さらに残りNOLについては、過去5年間にも遡りCarryback還付を受けることが可能となった。2017年以前の法人税率は、最高率35%であるため(現在は21%)、このCarryback還付は、極めてインパクトの大きい還付申請のチャンスとなる。

IRC 163(j)の支払利息損金算入制限の緩和

トランプ税制改革により、企業借入金によるネットの支払利息は、修正後課税所得(ATI)の30%範囲内で損金算入は可能、という制限が設けられていた。今回の措置により、2019年中または2020年中に開始する課税年度のネット支払利息は、ATIの50%の範囲内で損金算入が認められるように緩和された。

永野森田会計事務所では、引続きコロナウィルス対策の動向を注視し、読者にアップデート情報を適宜届けたいと考えている。

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