カリフォルニア州税法アップデート 

会計税務情報 2020年1月号
永野森田会計士事務所

カリフォルニア州税法アップデート 

 

東京オリンピック年の幕開けである。昨年アメリカでは、トランプ大統領による税法大改正(Tax Cuts and Jobs Act)による影響を色濃く受けた。今年は、連邦レベルでは細かい論点はあるものの、昨年ほどのドラスティックな改正は見られない。しかし、カリフォルニア州ではいくつかの注目するべきトピックスが存在する。今回はそれらについての概要を説明する。

 

  1. 従業員かコントラクターか

 

(1)  AB 5

 

Assembly Bill No.5(略称 AB5)が昨年末CA州議会で可決された。CA州労働法に関する重要改正法である。厳密に言えば、税法には直接関係ないものの給与税の取り扱いには影響してくる。趣旨としては、2020年1月1日より、これまでCA州Independent Contractor(契約社員、コントラクター)として契約している個人事業主に対して、「ABC Test」によるWorker Classificationのスクリーニングを行わなければならなくなる。この「ABC Test」を通して、コントラクターであることを証明することは大変難しくなり、従業員として扱わなければならないケースが多くなる。

 

端的な例として、Uber社やLyft社のケースがあげられている。アメリカのライドシェア大手は、従来のドライバーに対してはコントラクター扱いとしてきたが、2020年1月1日からは、全ドライバーを従業員として扱わなければならなくなる。すなわち、UberやLyftは、全ドライバーの失業保険税(Unemployment Tax, Employment Training Tax)や労災保険(Worker’s Compensation)、源泉税の処理、有給休暇や病欠休暇の付与、従業員ベネフィット、Employee立替金、最低賃金の維持等の負担を強いられることになる。危機を察したUberやLyftは、2020年からCA州内のみ料金値上げを発表するとともに、このAB5を不服とし、同法律の対象から除外するよう連邦に対して提起し、今年11月の大統領選挙時にCA州のProposition Voteで民意に訴えるという大胆な措置をとる。

 

この問題はUberやLyftのみならず、運送会社(トラック運転手)、メディア会社(記者)、清掃業(清掃者)などの値上げを後押し、会社経営を圧迫するのみならず、それらを利用する業界へのコストアップにもつながる。労働者保護政策の色濃いCA州の取る意図は汲み取れるが、CA州内の企業全般にとって負担になっているのは明らかだ。

 

(2)  ABC Test

 

ABC Testとは、

 

(A) Workerは契約上かつ実際上、業務遂行について会社側のコントロールおよび指揮命令を受けない

(B) Workerは会社側の通常業務外の業務を遂行する

(C) Workerは委託された業務を独立したビジネスとして通常的に従事している

 

という3つの条件を全て証明できなければコントラクターとして扱うことはできない。これらを証明できない場合は、サービスや労働を提供しているWorkerは、原則、従業員(employee)とみなされる。

 

(3) 問題点

 

この「ABC Test」には対象から免除されるExemption業種が50項目ほどある。医者、弁護士、会計士、建築家、エンジニア、保険や不動産エージェント、写真家、美容師などの専門業者である。問題は、このExemption業種に該当するかどうかは、解釈が必要になってくる場合が多いということである。またAB5は、あくまでもCA州レベルの事象であり連邦レベルでは従来のルール、つまりIRSによるCommon Law Testでコントラクターか従業員の判別を行うことになる。したがって、従来コントラクターと扱ってきたWorkerは、連邦レベルでは従来通り「コントラクター」として扱うが、CA州レベルでは「従業員」として雇用しなければならない、という「ネジレ現象」が起きてしまい、これが給与税の問題へと発展する。こうしたWorkerは、2020年の給与証明書発行時には、連邦レベルにおいてはコントラクター用のForm 1099を発行し、一方、CA州レベルでは従業員用のForm W-2を発行するというおかしな現象が起きてしまう。こうしたネジレ現象に対応して、連邦は独自のCA州用Form W-2を考案中という、たいへん分かりにくい状況に陥っている。このAB5が本当にクリアになるためには、もう少し時間を要するが、法律自体は、2020年1月1より適用となっている。当面、この問題に対応するには、まずLabor Law に詳しい弁護士に相談してWorker’s Classificationを実行するのが望ましい。

 

  1. Sales & Use TaxのCA州Economic Nexus導入

 

Wayfair判決後のEconomic Nexus普及

 

2018年6月のSouth Dakota vs Wayfair判決は、それまで各州のSales & Use Tax徴収ルールの基本であったPhysical Presenceルールから、それに加え、取引額や取引数によるEconomic Nexusルールを全米各州に導入するきっかけとなった。画期的な出来事である。これはそれまで州内に一切Physical Presenceのなかったインターネット販売業者が、州外から州内への取引額や取引数の一定額を超えることにより、当該州Sales & Use Taxを徴収・申告をする義務が、新たに生じるということを意味する。Wayfair判決後、アメリカ各州では次々にこのEconomic Nexusを導入していった。Economic Nexusルールの指標としては、South Dakotaの事例に倣い、「年間取引額$100,000超もしくは(or)取引個数200超」とするルールが普及していった。

 

CA州Economic Nexus ルール (AB 147)

 

CA州では、2019年4月1日以後、年間の取引額が$500,000を超える場合のみ、Sales & Use Tax申告義務が発生する。他州では通常要件としている「取引個数」は含まれていない。さらに、Marketplace Facilitator Actが制定された。Marketplace Facilitatorとは、Amazon、eBay、Rakutenといったインターネット販売の運営主体のことである。従来インターネット販売においては、Marketplace Seller(小売業者)がSales & Use Taxの申告責任主体を負っていたが、2019年10月1日より、Marketplace Facilitatorが申告責任主体に変更されたのだ。

 

  1. TCJAへのConformity

 

トランプ大統領による税法大改正Tax Cuts and Jobs Act (TCJA)が2018年度の連邦レベル(連邦個人税、連邦法人税)に与えたタックスインパクトはまだ記憶に新しい。一方全米各州レベルでは、この連邦TCJAにConform(準拠)するかどうかは判断がまちまちであった。たとえばCA州では、この連邦TCJAに合わせない税種目は多かったため、2018年の税務申告では連邦申告書とCA州申告書の間で計算の違いが目立った。このたの、CA州税はいくつかの内容をTCJAに合わせることになった。

 

【Accumulated Net Operating Loss(累積損失)】

TCJA:2018年度より従来の2年間Carry backを廃止し、従来の20 年Carryfowardを無期限に変更。また、2018年度以後より発生するNOLについては、課税所得に対して80%の相殺上限を設ける(従来は課税所得の100%を相殺可能)。

CA州:2019年度より、CA州でもCarrybackを廃止するが、Carryforwardは20年の現状維持。さらに課税所得に対して80%の相殺上限は設けていない(100%相殺可能)。

 

【Uniform Capitalization Rule(在庫調整)の適用緩和】

TCJA;2018年度より、Uniform Capitalization Rule (Sec 263A)適用から免除される要件として、従来の$5 Million(過去3年間の平均売上げが$5 Million以下の場合は規定から免除)を$25 Millionまでに上限を緩和する。

CA州:2019年度より、Uniform Capitalization Ruleの免除要件として、従来の$5 Millionから$25 Millionに適用上限を緩和する。ただし、2018年度に遡って適用しても良いが、その場合は修正申告を提出する。

 

一方、依然としてCA州では、次の通り連邦TCJAへConfirmをしていない税法も多く存在する。

 

・Sec 163(J) Limit on Deduction for Business Interest Expense

TCJAによるSec 163(j)の計算方法は大幅に変わったが、CA州ではTCJA以前のSec  163(j)ルールを適用している。そのため連邦と州とは別々の計算フォームを利用する。

・Suspension of personal exemption

人的控除(personal exemption)については、TCJAにより連邦レベルでは廃止したが、CA州レベルでは存続する。

・Moving expense deduction

引越し費用の控除は、TCJAにより連邦レベルでは廃止したが、CA州では存続している。

・International Tax Reform

TCJAにより連邦レベルではRepatriation Tax、GILTI、FDII等の新しい国際税法が導入されたが、CA州では導入されていない。

・Corporate AMT repeal

TCJAにより連邦レベルでは法人税のAMT(Alternative Minimum Tax)計算は廃止されたが、CA州の法人税では存続している。

 

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永野・森田米国公認会計士事務所