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NAGANO MORITAは、プレーガー メティス米国会計事務所の日系部門です。

日米の消費税・間接税の国際比較

先月の衆議院選挙で歴史的大勝を収めた高市早苗首相は、国民生活を圧迫する物価上昇や家計負担への対応策として、「消費税減税」を重要政策の一つとして位置づけている。とりわけ、食料品に対する軽減又は時限的な税率引下げは、家計支援策として国会でも議論の俎上に載せられている。こうした政治・経済の両面における議論は、消費税に対する国民的関心の高さを改めて示すものといえよう。そこで本稿では、日本の消費税を、アメリカその他主要国の間接税と比較し、その客観的な位置づけを概観する。あわせて、日本・欧州・カナダ等で一般的に採用される付加価値税方式と、アメリカで採用される小売売上税方式との差異を整理し、各国の課税形態の特徴を概説する。

 

1.日本の消費税

 

日本では、1989年4月に消費税(Japan Consumption Tax:JCT)が間接税として導入された。これは、所得税減税等を含む税制改革の一環として導入されたものであり、商品の販売やサービスの提供に対して3%の消費税が課されることとなった。その後、税率は1997年4月に5%、2014年4月に8%へと段階的に引き上げられ、2019年10月には現行の10%となった。あわせて、飲食料品等の一部品目については、軽減税率として8%が適用されている。では、日本の消費税率は、国際的に見てどの程度の水準に位置しているのであろうか。消費又は売上を課税対象とする主要国の間接税を比較すると、以下のとおりである。

 

<消費税等間接税国際比較>

 

国名      消費税等名称              標準税率

日本      消費税(JCT)              10% (軽減税率8%)  

カナダ     Goods and Services Tax(GST)        5%-15% *1

オーストリア  Mehrwertsteuer(MWST)       10% -20%

フィンランド  Arvonlisavero(ALV)           10%-24%

フランス    Taxe sur la Valeur Ajoutee(TVA)      20%

ドイツ     Mehrwertsteuer (MWST)       7%-19%

オランダ    Belasting Toegevoegde Waarde(BTW)  21%

スウェーデン  Mervardesskatt(MOMS)                           12%-25%

イギリス    Value Added Tax(VAT)                              20%

アメリカ    Sales & Use Tax                                        7%-10% *2

メキシコ    Impuesto al Valor Agregado(IVA)          16%

オーストラリア Goods and Services Tax (GST)                10%

 

*1 連邦GSTは5%であり、州によっては州売上税又はHSTが加わる。

 

*2 アメリカには連邦付加価値税はなく、売上税は州・地方税として課される。州・地方ごとに利率が異なる。高税率に位置するカリフォルニア州では、州全体の基本税率は7.25%であり、地方税の上乗せにより、実効税率は9%-10%前後となる。

 

以上から、日本の標準消費税率10%は、欧州諸国の20%前後の付加価値税率と比較すれば、なお低い水準にあることが分かる。ただし、単純な税率比較のみでは実態を十分に把握することはできない。なぜなら、各国で課税方式、課税対象、軽減税率、非課税取引の範囲が異なるためである。したがって、税率のみならず、制度の構造自体を比較する必要がある。

 

2.日本、欧州及びカナダの課税形態 ― 付加価値税

 

日本の消費税は、基本的にはEU型の付加価値税(Value Added Tax: VAT)に属する仕組みである。この方式では、物品の譲渡やサービスの提供の各段階で所定税率の税が課されるが、各事業者は自らが受け取った税額から、仕入れ等の際に支払った税額を控除し、その差額のみを納付する。結果として、税負担はサプライチェーンの最終段階に位置する最終消費者に帰着する構造となっている。

事業者の立場から見ると、売上に係る消費税は受取消費税(output tax)であり、仕入れや外注等に係る消費税は仕入税額(input tax)である。申告においては、受取消費税から仕入税額控除額を差し引いた残額を納付し、逆に仕入税額が上回る場合には還付を受けることになる。この基本構造は、日本の消費税、欧州諸国のVAT、カナダのGST/HSTに共通するものである。

もっとも、制度運用には差異がある。EUでは、登録事業者が発行する適格な請求書に基づくインボイス制度が仕入税額控除の中心である。日本でも2023年10月から適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されており、現在は、原則として適格請求書発行事業者が発行した適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となっている。

 

3.アメリカの課税形態-小売売上税

 

これに対し、アメリカで一般的に採用されている間接税は、小売売上税(retail sales tax)である。小売売上税では、原則として最終消費者に対する販売段階でのみ課税が行われ、製造業者や卸売業者間の取引には通常課税されない。したがって、VATのように各流通段階で税が発生し、それを前段階税額と相殺する仕組みは存在しない。

この制度の下では、再販売目的で商品を購入する事業者は、自らが最終消費者ではないことを示すため、再販売証明書(resale certificate)を仕入先に提出し、売上税の免除を受けるのが一般的である。つまり、税の徴収ポイントはサプライチェーンの末端に集中しており、付加価値税とは構造的に大きく異なる。 

また、アメリカの売上税は、州及び地方政府の税として課されるものであり、連邦レベルのVATや全国一律の売上税は存在しない。この点は、日本や欧州との大きな相違点である。さらに、課税対象についても州ごとの差が大きく、物品の販売を中心としつつ、一定のサービスやデジタル取引に課税する州もあるため、「サービスには原則として課税されない」と一律に表現するよりも、「伝統的には物品Tangible Assets中心であったが、近年は州ごとにサービス課税の範囲が異なる」と整理する方が正確である。
加えて、小売売上税では、機械設備等の事業用資産について、購入者である事業者自身が最終消費者とみなされ課税される場面がある。これに対し、付加価値税では、事業のために用いる資産取得に係る税額は、原則として仕入税額控除の対象となる。この違いは、設備投資の税コストやキャッシュフローに影響を与える重要な論点と言える。

 

4.まとめ

 

以上を要約すると、日本の消費税は、世界的に広く採用されている付加価値税方式に属するものである。一方、アメリカ型の小売売上税はむしろ例外的な課税形態であるといえる。もっとも、アメリカでは連邦レベルの消費課税が存在せず、また州によってはサービス課税の範囲も限定的であることから、消費に対する実効的な税負担は、単純な名目税率比較よりも低く現れる場合がある。

他方で、アメリカでは連邦財政の主要な財源が所得税等に依拠しているのに対し、日本及び欧州諸国では、消費課税が財政基盤として重要な役割を担っている。したがって、日本の今後の税制を考えるに当たっては、単に税率の高低のみを論じるのではなく、所得課税・消費課税・社会保険料負担を含めた全体の租税・社会保障負担構造の中で議論されることが考えられる。日本の消費税率は、国際比較上なお相対的に低い水準にあることから、長期的に観ると、今後の財政事情や社会保障財源の議論次第では、欧州型のより高い消費課税が政策選択肢として再び浮上する可能性もある。

 

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