永野・森田米国公認会計士事務所では、日米会計、経理、簿記、監査、税務、など日系企業の
米国進出ならびに米国での事業拡大に貢献してきた米国公認会計士事務所です。

JAPANESE / ENGLISH

採用情報 / お問合せ

トップページ > ニュース一覧

Wayfair, FDIIと移転価格コンサルティング 2019/04/04

会計税務情報 2019年4月号
永野森田米国会計士事務所

 

Wayfair, FDIIと移転価格コンサルティング

 

これまでに「移転価格作業の現場より」のタイトルにて、実務家の視点より米国移転価格税制を論じたが、実際の移転価格案件においては、その過程にて、移転価格問題に限らず、クライアントが抱える様々な税務イシューが露呈することが多い。弊所が携わる移転価格案件の過半数はインバウンド取引に伴うものだが、移転価格ドキュメント執筆の為事実確認した結果、移転価格以外の事柄について、コンプライアンス上の問題が指摘されたりする。こうした発見は、いわば、移転価格コンサルティングの‘副産物’であるが、顧客にとっては、移転価格以上の死活問題であったりする。一般的なインバウンド取引のコンテキストにおいては、恒久的施設(PE)税制への抵触、州税及びSales/Use taxに関するネクサス問題、親会社への見做し配当問題等をよく目にする。これら問題が介在する案件では、従来の移転価格の範疇を超えたコンサルティングを施すのだが、クロスボーダー取引に関わる税法においては、連邦、州のいずれのレベルにおいても、如何にルールが執行(Enforce)されるのか不透明な場合が多い。十分なルールが備わっていないケースにもよく出くわす。法の執行、運用に関し疑問が多く、法の条文をなぞっただけではコンサルティングとしての意義をなさない場合に、如何にして有益なアドバイスを顧客に提供するか、昨今よく話題に上る、Wayfair、FDIIを例に見る。

 

 

Wayfairとインバウンド取引

日本企業が米国市場向けにプロダクトを販売する取引を米国税務の観点からはインバウンド取引と呼ぶが、左様なインバウンド取引では、米国子会社がセールス・レップ(代理店)若しくはディストリビュータ(販売店)の立場で、現地におけるセールス、マーケティング機能を担う場合が多い。親会社と口銭契約を結ぶ米国子会社が、親会社に代わり米国顧客と契約を交わす、所謂問屋(といや)契約に基づくアレンジメントを、よく目にするが、こうした問屋子会社についても、日米租税条約(第5条6項)は“General Commission Agent”という呼称の下、セールス・レップと性格付けている。また租税条約の日本語訳において、General Commission Agentは、単純に"問屋”と訳されている。問屋は、租税条約上も、米国内国歳入法上も、セールス・レップの立場で、当該取引から派生する手数料を収益として、税務申告する。

 

2018年6月に連邦最高裁より下されたWayfair判決により、全米各州は、州内に、人、物、事務所等、物理的なものを有さない州外法人に対してもUse Taxの徴収義務を課す事が可能となった為、インバウンド取引に従事する日本企業の多くも、売上先州において、Use Tax徴収義務や登録義務を負うこととなった(詳しくは、会計税務情報2018年7月号御参照)。Wayfairは、米国内企業、外国企業一様に適用されるが、そのコンプライアンスにかかるコストが、外国企業にとっては大きな障害となる。Use Taxの徴収、当局への支払いを簡略化するソフトウェアや関連サービスが米国内では利用可能な一方、そうした便宜を享受できず、また国内銀行口座も持たない外国企業にとってコンプライアンスのハードルは高い。しかしながら、Wayfairは既に全米40州にて採用されており、新制度の下、新たに納税、登録義務を負った日本企業は、Wayfairのコンプライアンス・リスクを慎重に評価する必要がある。

 

左様なリスクアセスメントの一助となるべく、我々がコンサルティングを施す際には、Wayfair執行方針につき各州当局より聴取した情報が拠りどころとなる。例えばカリフォルニア州の税務当局であるFTB、EDD、CDTFAには、弁護士や、豊富なTax Audit経験を持つ識者からなる‘Tax Opinion Expert Team’が存在する。こうした人材と接触し得た、税務当局の視点や戦略についての知見が、拠りどころとなる。税務当局は、州の歳入機関であり、Wayfairの様なルールの執行方針には、歳入増加を狙う各州の思惑が如実に反映する。以下はその一例。

 

弊所がWayfair執行方針についての尋ねた際のCDTFA回答の部分和訳:我々(カリフォルニア州)の狙いとしては、今後、大きな会社、工場等に対して、Use tax auditを行った際にUse tax支払い漏れが発覚した場合、「最初から、カリフォルニアのベンダーから購入するか、若しくはWayfairルールを遵守している州外ベンダー(その場合、州外ベンダーであっても、販売の際にUse taxを顧客から徴収する)から商品を購入していれば、Use tax支払い漏れを指摘されるには至らなかった」という事を納税者に自覚させ、今後は、そうしたベンダーからのみ商品を購入する様、納税者の行動様式を変えることにある。

 

インバウンド取引に従事する日本企業が、米国子会社をセールス・レップとして用いている場合には、子会社に売り上げ代金の回収(及びUse Taxの徴収)をさせる事で、Wayfairコンプライアンスのハードルが低減する。上述の通り、例え子会社が‘問屋’として機能しても、会計、税務上は、依然としてセールス・レップとして扱われる。

 

 

FDIIとインバウンド取引

FDIIルールは、米国企業が海外向けにモノ、サービスを販売したり、無形資産をライセンス契約したりして生じた所得の一部につき、課税所得の計算過程にて所得控除させる制度であり、輸出促進の為の事実上の助成金と目される。その為、日本企業によるインバウンド取引を助長する形でFDIIルールが利用されることは、必ずしも本制度の意図するところでないと考えるが、今年3月にIRSが発表したFDIIルールについての財務省規則案(Proposed Regulation)を読むに、日本企業が米国の代理店子会社に支払う口銭手数料については、当該子会社が代理人PEに該当しない限り、同ルールの対象となる。

 

米国の代理店子会社が受け取る口銭手数料がFDIIルールの対象となることは、インバウンド取引に従事する日本企業にとって、思いがけない朗報であるが、必ずしも米国議会が意図した結果ではないとも思われた為、財務省規則案発表直後より、IRS主席法律顧問官(Office of Chief Counsel)にて当該規則案作成に関わったIRS弁護士と連絡を取り、当方の解釈の妥当性やルール運用上の留意点について確認を取ってきた。3週間に渡る聴取を経て、受領した情報は以下の通り。

 

  • (IRS弁護士に提示したファクト・パターンにつき)懸案の口銭手数料は、FDIIルールの対象。
  • 但し、(1)代理店子会社が経済的実態を有する事、(2)口銭手数料が独立企業間の原則に則り決められている事、の両条件を満たす必要あり。
  • 今後、財務省規則が制定される過程において、ルール変更により、口銭手数料FDIIルール対象外となる可能性もある。

 

現行の財務省規則案では、インバウンド取引のコンテキストにて米国代理店子会社が日本の親会社より受け取る口銭手数料であっても、その価格設定が独立企業間の原則に則っている場合、FDIIルールの恩恵に与れる。インバウンド取引に従事する日系企業クライアントに、朗報を届ける結果となった。

 

 

アップデート

 

本ニュースレター発行後に、上述のIRS主席法律顧問官付弁護士と、日本の親会社の為に米国子会社が、以下のダイヤグラムの要領にて、コスト・プラス・ベーシスにて委託研究業務を行う場合に、FDIIルールの対象になり得るか、確認を取った(2019年5月1日聴取)。

 

 

確認できた内容は以下の通り。

 

  • 親会社が米国に事務所を有さず、当該子会社が代理人PEルールに抵触せず、更に、子会社に支払われる委託研究報酬が独立企業間の原則に則っている場合、先のインバウンド取引に絡んだ口銭手数料の場合と同様、FDIIルールの恩恵に与れる。
  • 米国子会社が内国歳入法第41条が定めるリサーチクレジットを取っていたとしても、上記結果は変わらず。今回発行された財務省規則案には、FDIIルールの恩恵に与れない6項目が盛られているが(財務省規則案1.250(b)-1(c)(14))、いずれの項目も、リサーチクレジットとは関係ない。

米国納税者がリサーチクレジット(税額控除)を利用する場合、所得控除出来る研究開発費は内国歳入法第280C条の下減額されるが、FDII計算上は有利な結果となる(DPADやFTC limitation計算時も、同様に、有利な結果をもたらした)。

 

上記ダイアグラム中の米国子会社は、リサーチクレジットに加え、FDII、及び280C条に絡む恩恵も併せて享受できる。米国子会社を通じ、米国にてR&D活動に従事する日本企業にとっては朗報である。

 

 

【執筆者連絡先】Los Angeles Office河村(213-347-1129)

 

********

< Wayfair判決の日本企業への影響 | >