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トランプ税制改革 - 法人税編 2018/03/04

会計税務情報 2018年3月号
永野森田会計士事務所

トランプ税制改革-法人税編

 

去る2017年12月22日、トランプ大統領によるTax Cuts and Jobs Actが署名された。アメリカにとっては30年振りの大税制改革と言われている。法人税の改革の目玉となるのは、なんと言っても21%フラット課税率への低減だが、ほかに海外に所得を移転する関連会社をターゲットとした、新しいタックスが目白押しで登場する。またMeal & Entertainment(これまで50%控除可能)のうち、Entertainmentは控除から全額否認されるのも2018年以後開始の会計期間からとなる。よって、2018年からはMealおよびEntertainmentを、経理上、勘定科目別に分けるという作業も出てくる。 今回は、こうした大きな税制改革における法人税の主要ポイントにつき、解説する。

 

 

1. 開始時期
原則:2018年1月1日以後から開始のCorporate Tax Yearを対象とする。

 

 

2. 法人税率の引き下げ
Corporate Tax Rateは、35%を上限とする累進課税から、定率21%へと引き下げられる。

 

 

3. 法人AMT(代替ミニマム税)廃止
法人AMTは廃止されるが、個人AMTは存続する。代わりに新しい税、 BEAT(税源浸食租税回避防止税)が導入される(下記15.参照)。

 

 

4. 受取配当控除(DRD)の引き下げ
Form 1120 Schedule Cにおける受取配当控除(Dividend Received Deduction)の控除金額が抑えられる。20%以上持株の会社については受取配当80%から65%、20%未満持株の会社については受取配当70%から50%へと、控除額は引き下げられる。

 

 

5. 新規購入固定資産のボーナス償却(Bonus Depreciation)の拡充
新規の適格固定資産(Qualified Property)について、2017年は取得価格50%を即時償却することが認められている。今回の法改正により、2017年9月27日以後に取得、事業の用に供する適格固定資産については、100%即時償却が認められることになった。また、かつては認められなかった中古固定資産(used property)の新規購入については、一定要件を満たせば、特別ボーナス償却の対象となる。

 

 

6. 新規購入固定資産Sec 179即時償却の拡充
新規購入固定資産の一括償却という点では、ボーナス償却と似ているが、Sec 179の場合、課税所得を出さなければならず、かつ、償却額には上限キャップなどの制限が設けられている。このSec 179による即時償却の上限額が、$500,000から$1,000,000と倍に拡充される。また”Dollar for Dollar“による上限額の引き下げ方向への超過地点(Threshold)も、$2,000,000から$2,500,000に引き上げられる。これによりSec 179による一括償却は、一層使い易くなると予想される。

 

 

7. スモール・ビジネスの現金主義使用可能基準の緩和
現金主義を会計基準として使用できる基準について、過去3年間の総売上平均$5 million未満のスモール・ビジネスのみが、対象だった。今回の法改正により、この基準が過去3年間の総売上平均$25 million未満まで引き上げられ、現金主義を使用できるスモール・ビジネスは増えることにつながる。

 

 

8. 統一資本化ルール(UNICAP)の使用規制の緩和
一定基準を満たした法人は、会計上の販管費等を、税務上は資本化(Capitalize)しなければいけないルールである(IRC 263A)。こうしたルールを採用しなければいけない会社は、不動産(real property)や有形固定資産(tangible property)の製造(producer)、または再販(reseller)が対象となっていた。その例外としては、過去3年間の総売上平均$10 million以下の再販業(Resale)につき、small reseller exceptionとしてUNICAPは免除されていた。逆を言えば、再販業(reseller)ではなく、製造販売業(producer)であれば、自動的にUNICAP対象となっていた。
今回の法改正により、この例外対象が、拡大された(expanded exception)。具体的には、1)例外対象は過去3年間の総売上平均$10 million以下から、過去3年間の総売上平均$25 million以下へ緩和、2)例外対象が再販業(reseller)から製造販売業(producer)にも拡大される、といった二段階においてexceptionは拡大される。これにより、多くの企業は、UNICAP計算から開放されることが予想される。

 

 

9. 過大支払利息税制の規制変更
Earning Stripping Ruleや過小資本税制とも呼ばれている。海外関連会社への過大な利息支払による所得控除を、防止するために設けられている。Form 8926上で計算されるが、計算過程における最初のステップとして、会社の借入金が資本金の1.5以上あるかどうかを確認する。今回の法改正により、この確認過程が完全になくなる(それが故に「過小資本税制」とも呼べなくなる)。さらに計算方式にいくつかの変更点が加わる。会社側にとってデメリットになる変更点としては、Disallowed Interest(利息否認)額が、これまでNet interest expenseがAdjusted Taxable Income 50%を超過部分となっていたが、今回の法改正により、Net interest expenseがAdjusted Taxable Income 30%の超過部分に拡大、利息否認の対象エリアは大きくなる。また、Disallowed Interestの上限とするDisqualified Interestが存在していたが、この上限もなくなる。一方、大きなメリットも加わる。従来、同規定のもとではSmall Business Exceptionは存在しなかったが(No small company exception)、今回の法改正により、過去3年間の平均$25 Million Gross Receipt 以下の会社については、このIRC 163(j)対象から除外される。結局のところ、今回の改正により、163(j)の対象会社は大幅に減ることが予想される。

 

 

10.  NOL(繰延欠損金)の使用制限
Net Operating Loss(NOL)は、会社で過去2年間Carryback、または将来20年間Carryfowardでき、その年度の課税所得に対して100%相殺できた。今回の法改正でそれが変わる。2017年12月31日以後開始されるtax yearsについて、そのtax yearで発生する新しいNOLについては、過去へのCarrybackは禁止、Carryforwardは無期限できる。しかし、その年度の課税所得に対しては、80%しか相殺できなくなる。なお、今回の法改正の適用は、この新しく発生するNOLに限るため、以前のtax yearに発生し蓄積されてきたNOLについては、従来どおりの規定(Carryback 2年、Carryforward 20年、taxable income 100% deductable)となる。したがって、NOLの管理(before 2017, after 2017)が重要となる。

 

 

11. 国内生産活動控除(DPAD)の廃止
従来、米国国内において生産活動から生じた一定の所得については、課税所得の9%まで控除可能だった。今回の法改正により、2018年1月1日以降に開始する課税年度から、同制度はなくなる。

 

 

12. 交際費(Entertainment Expense)の控除否認
現在、Meal and Entertainmentは、ともに50%損金算入可能となっている。新しい法改正により、交際費(Entertainment)は、原則として控除不可となる。一方、飲食(Meal)の部分は従来どおり、ビジネス上Ordinary and Necessaryな支出は50%控除可能である。このため、従来はMeal and Entertainmentと一緒になっていた勘定項目を、Entertainment勘定とMeal勘定と、別々に管理することが求められる。2018年1月1日以後から開始のTax Yearからである

 

難しいのは、いわゆる接待用の会食が、EntertainmentかMealかについての判断である。必ずしも明確ではないため、今後のIRSガイダンスに注目したい。この点、2018年3月2日付けのBloomberg記事によると、興味深い指針を示している。その記事では、食事費を含めた接待費は、原則的に全額控除否認すべき、例外的には控除可能である、との見解を出している。

 

原則: 食事費を含めた接待費は、原則的に全額控除否認される。-0%控除可能
例外: a) 社内での飲料、スナック費用、ミーテングの食事費、旅行の際の食事手当―50%控除可能
   b) 従業員、取締役、株主との食事費―50%控除可能
   c) ホリデー・パーテー、サマー・ピクニック等の食事費-100%控除可能

 

以上の通り、当面は、会社の外部関係者(顧客含む)との食事費用について、Entertainment として全額控除否認の扱いにした方が、無難といえそうだ。

 

 

13. 外国源泉受取配当の全額控除
従来、海外子会社等の所得は、株主へ配当された時点で課税、外国で支払った税金は外国税控除として使用できた。今回の法改正により、海外子会社(米国法人が10%以上を保有する会社)からの受取配当については、外国源泉の部分に限り、原則、所得から全額控除できるようになる。その代わり、外国支払いの税金は外国税控除として使用できなくなる。これにより、海外子会社から、米国親会社への配当が促進されることが期待されている。

 

 

14. 外国法人留保利益へのみなし配当課税(Deemed Repatriation Tax)
従来、海外子会社等の所得は、株主へ配当された時点で課税、外国で支払った税金は外国税控除として使用できた。一方、配当されなかった外国法人の留保利益については、Subpart F Income(外国当地と関係の薄い受動的所得(Interest, Royalty等)に対する課税)以外については、課税されなかった。これを補う形で、今回の法改正により、Subpart F Incomeの定義が拡充されている。すなわち、1986年から2017年11月2日もしくは2017年12月31日の留保利益(E&P)のどちらか大きい額を対象にして、みなし配当の課税対象となる。一度だけの課税となる。またelectionにより、8年間の分割払いも可能とする。
具体的には、現金及び現金同等物対応部分の留保利益に対しては15.5%、その他残りの対応部分の留保利益については8%、のレートで課税される。この間、外国で支払われた税金は外国税控除(FTC)として使用できる。対象となる外国法人は、米国法人が10%以上を保有する外国法人、もしくはCFC(Controlled Foreign Corporation-50% of voting stock is owned directly or indirectly by US shareholder)である。2017年度のTax Returnに登場、新しいForm 5471上の計算になると予想される。

 

 

15. 課税ベース侵食並び租税回避の防止税(Base erosion and anti-abuse tax (BEAT))
過去3年平均売上が$500 million超とする米国会社を対象として新しいTaxである。その計算方法は、米国会社から海外関連会社に対する、Base Erosion Payments(定義:利息、ロイヤルティ、保証料、関連会社から購入した固定資産の減価償却等)が、損金算入合計額の3%以上(Base Erosion Payments/Total Tax Deductions ≥3%)の場合、Base Erosion Minimum Taxを課すことになる。このBase Erosion Minimum Taxの計算方法としては、Base Erosion Paymentsの控除を否認したAdjusted Taxable Incomeに対して、10%の課税額を計算、それが通常の法人税額を超過する部分について、原則10%レートで課税する。この新しいtaxの適用は、2018年1月1日以後開始のTax Yearからとある(ただし、2018年から開始する初年度は、10%から5%に減額されている)。

 

 

16. 無形固定資産低課税所得Tax (Global Intangible Low Taxed Income (GILTI) Tax)
海外関連会社の無形固定資産(Intangible Asset)から発生する収益の課税を目的とした、新しいTaxである。従来のSubpart F Income Taxが拡充された形となる。CFC(Controlled Foreign Corporation)を対象とする。計算方法は非常に大雑把である。まず、CFCの固定資産合計x10%を、通常の能動的所得(Active Income)とみなす。CFCのForeign Income合計が、そのみなし能動的所得を、超過する部分につき、無形固定資産から発生する収益部分と推定する。いわば推定計算である。GILTI = (foreign income-(0.1 x foreign assets))という形となる。実行税率は約10%。GILTIに対応する外国税控除は認められるが、控除額としては支払税80%の上限が設けられている。2018年1月1日以後開始の会計期間から適用される。2018年度のForm 5471から登場すると予想される。

 

 

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