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米国非居住者からの遺産相続・贈与と国外金融資産の情報開示義務 2016/10/04

会計税務情報2016年10月号
永野森田米国公認会計士事務所

 

米国非居住者からの遺産相続・贈与と国外金融資産の情報開示義務

 

米国では国外に資産を有する米国納税義務者に数々の書類の提出を義務付けている。提出を怠たれば高額なペナルテイーが課せられたり、悪質な場合は刑事罰の対象にもなりうることは2014年5月号でも述べた。今回は、米国納税義務者に課せられる (1) 米国非居住者から米国外にある資産を遺産相続・贈与で受けたときの米国での情報開示義務、(2) 国外金融資産から生じた所得の申告義務と申告に添付する形で行われる国外金融資産の情報開示義務、(3) 税務申告とは別に財務省に対して行われる国外金融資産の情報開示義務 について、報告内容等を比較してまとめてみた。

 

(1)米国非居住個人から米国外にある遺産相続・贈与を受けたときの米国での情報開示義務
米国非居住個人(Nonresident Alien)※1から遺産相続・贈与で10万ドル以上の評価額(時価)の米国外にある資産を受け取った場合、Form 3520, “Annual Return To Report Transactions With Foreign Trusts and Receipt of Certain Foreign Gifts”で情報開示する義務が生じる。税金の申告ではなく情報の報告である。Form 3520 は米国非居住個人 だけではなく、国外の法人、パートナーシップ、遺産財団及び信託から贈与・支払いを受けた場合も提出義務があるが、ここでは、米国非居住個人からの相続・贈与の場合のみを説明する。
※1 米国非居住個人(Nonresident Alien)とは、Internal Revenue code (IRC) が定める税務上のNonresident Alienであり、物理的に米国に住んでいないということと同義ではないことに留意されたい。
基本的に相続した資産を相続の日(被相続人が亡くなった日)または、条件付ではあるが被相続人死亡の6ヶ月後の時価 (Fair Market Value)で報告する。不動産の時価は、日本の相続税申告書上や固定資産税上の評価額とはかなり異なることが多いので、時価を証明できるような資料を集めて額を推定したり、鑑定士に委ねることになる。相続時の時価は取得原価とされ、当該相続不動産を売却した時の譲渡損益と税金の計算に影響するので、正確に把握しておくのが好ましい。有価証券を相続した場合も、日本の相続税申告書上の額は必ずしも亡くなった日の時価ではないので注意が必要である。

Form 3520 の提出期限(原則、相続のあった年の翌年の4月15日だが、期限延長後は10月15日)までに相続資産を受け取っていない、または分割協議が進まず相続する額がわからない場合でも提出義務・期限は変わらない。日本居住者からの相続の場合、日本の相続税申告書期限上、10ヶ月以内に被相続人の遺産合計額は判明しているはずなので、そこから推定額を算出して申告しておく等、対処の仕方はある。
なお、Form 3520 で報告示した資産は、重複をさけるためにその年度のForm 8938(以下に説明)に含めなくてもよい措置がある。
Form 3520 に関して詳しくはhttps://www.irs.gov/instructions/i3520/ 参照。

 

(2)国外金融資産から生じた所得の申告義務

米国では全世界から得た所得が課税対象になるので、外国にある不動産からの賃貸収入、国外金融資産から得た利息、配当金、譲渡損益等も課税所得である。所得として申告することに加えて、Form 8938, “Statement of Specified foreign Financial Assets”に国外金融資産の情報とその資産から得た所得を記入し、税務申告書に添付してInternal Revenue Service (IRS) へ提出する。報告義務の詳細に関しては下の表を参照されたい。なお、国外金融資産から所得がなくても一定額の残高がある場合にはForm 8938 を提出する必要がある。

 

(3)FinCEN form 114   国外金融資産の情報開示
報告様式は、Financial Crime Enforcement Network (Fin CEN) 114, “Report of Foreign Bank and Financial Accounts” でよくFBAR(エフバー)と略称される。この開示は、様式の名称のとおりマネーローンダリングを始めとする金融犯罪を取り締まる観点から要求されるもので、報告先も税務を監督するIRSではなく、財務省になる。なお、相続で譲り受けた金融資産に関しては、自分名義の国外金融口座に金融資産が入っていない時点では報告義務が発生しない。例えば、2016年12月に日本の被相続人が亡くなって実際に金融資産を相続人の日本の口座に送金したのが2017年1月だとすると、2016年度のFinCEN114での報告義務はない。

上述した3つの報告制度に関して、報告義務があるかどうかの判断と対象になる資産の種類を概括したものが以下の表になる。詳細はhttps://www.irs.gov/businesses/comparison-of-form-8938-and-fbar-requirements を参照されたい。

 

報告義務の比較

 

Form 3520 (米国非居住個人からの相続・贈与のみの説明)

Form 8938

FinCEN Form 114

誰が報告義務を負うか

米国納税義務者で米国非居住者から遺産相続・贈与を受けた者

米国市民・居住者、特定のnon-resident aliens 等で、特定国外金融資産を所有する者

米国納税義務者(米国市民・居住者、信託、遺産財団、法人等)で、国外金融口座を所有権する者

報告が必要となる基準

相続・贈与額が10万ドル以上の場合

単身者及び夫婦個別申告者:特定国外金融資産の額が年度末において5万ドル、もしくは、年度中に7.5万ドルを超えた場合。夫婦合算申告者:その倍額を超えた場合

国外金融口座の評価額合計が年度中に1万ドルを超えた場合

報告内容

相続・贈与を受けた資産を相続・贈与時の評価額で報告

特定の国外金融資産の年間最高評価額。詳細は下の表を参照

外国にある金融機関の口座の年間最高評価額。詳細は下の表を参照

報告期限と報告先

確定申告書に添付しない。同じIRS だが確定申告書と送り先が異なる。期限は個人の確定申告書と同じ(延長申請期限も含む)。

確定申告書に添付して4月15日(延長申請可能)IRS へ提出

2016年度の申告から4月15日が期限。財務省へ電子申告。ペーパーは受け付けられない。延長申請可能

 

報告対象資産の比較
Form 3520 での対象資産は原則として受け取った資産すべてである。Form 8938 と Form 114 では次の通り。


対象になる一般的な資産

 

Form 8938

FinCEN Form 114

外国の金融機関にある口座

YES

YES

米国の金融機関の外国支店にある口座

NO

YES

外国の金融機関の米国支店にある口座

NO

NO

外国の金融機関口座のサイン権をもっている場合

口座の所有権がない 場合はNO

YES (例外あり)

外国の金融機関口座にある外国の有価証券

有価証券の内訳の報告は不要で、口座の評価額を報告する。

有価証券の内訳の報告は不要で、口座の評価額を報告する。

金融機関口座には入れていない外国の有価証券

YES

NO

外国のパートナーシップの持分

YES

NO

企業体等を通して持っている国外金融資産

NO

YES, その企業体等のオーナーシップを50%以上持っている場合等(その他制約あり)

外国で発行されている生命保険や解約返戻金の付いた年金契約

YES

YES

直に所有する外国の不動産

NO

NO

外国の企業体を通して所有している外国の不動産

NO, しかし外国の企業体そのものはYES。その企業体の評価は不動産を含む。

NO

口座に預けていない外貨

NO

NO

個人所有物;アート、骨董品、宝石、車、コレクション等

NO

NO

国外政府が取り扱っている社会保険等

NO

NO

 

上記のように、米国では課税目的や金融犯罪抑止目的等のために国外にある資産を報告する制度が各種存在する。報告を故意に怠ると、悪質だと判断された場合は報告対象資産以上のペナルテイーを課されて刑事責任まで問われるケースもあり、故意でなくても$10,000といったペナルティが規定されているものもある。報告義務を知らないまま報告を怠ったといったことがないよう報告義務の概要を把握しておくことが肝要である。なお、上の表では一般的な資産のみを挙げたが、その他にも報告対象になるかどうかの判断が難しい資産も多々あるため、実際の個別的な判断にあたっては専門家に相談していたくことをお勧めする。

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