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内国歳入法385条の動向に注目しよう 2016/09/04

会計税務情報2016年9月号
永野森田会計士事務所

内国歳入法385条の動向に注目しよう

半世紀近く凍結状態になっていた税法が、今再び脚光を浴びている。通称Earnings- Stripping Rules―過少資本税制-Internal Revenue Code385条だ。1969年に制定されたものの、諸事情から、同条項下の財務省規則はついぞ具現化されず、一部の専門家の間では運用不能とまで考えられていた。ところが今年4月に同条項下の財務省規則(Regulation)(案)が発表されたのだ。アメリカ企業の外国企業による買収後、外国企業が子会社化したアメリカ企業に対して貸付を起こすことで利益を海外に移転するなど、米国にとって著しく不利益をもたらすスキームが問題視されるようになったことが背景にあるらしい。オバマ政権が圧力を掛けたとされるPfizerによる アイルランドのAllergan買収スキームも関係しているようだ。関連会社間取引への新たなガイダンスとして、日本からの進出企業はその趣旨に注目し、それがもたらす影響を把握することが求められている。因みに、IRSは、本規則の早期施行を目指すようだ。

 

Earnings -Stripping Rulesとしては、これまでも外国企業を親会社とする米国子会社の借入を対象とするも、不適格支払い利息税制 (163(j)) が主役を務めてきた。しかし、これは一定の自己資本比率以下の米国子会社のみを対象とする制限でしかなく、且つ、利息控除否認は源泉率との相関関係を考慮する上、その制限は一時差異的なものにしか過ぎない。これに対し385条では、以下に見る通り、コモンローに準拠した金銭負債そのものが否認されることになる。

 

  • 1. 歳入法385条の骨格

 

当該税法は、冒頭に於いて、その目的が金銭負債取引と株式取引の差異基準を提供する為に設けられたことを明らかにした上で、その判定基準として次の項目を挙げている。

(a) 金銭負債としての必要条件の文書化、   (b) 企業の他の負債との優先/劣後関係、  (c) 自己資本比率、(d) 金銭負債の株式への転換性  (e) 取引当事者間の関係

当然のことながら、財務省規則はこうした骨格に肉付けを施したものとなっていることが期待されるところ、今回公表の財務省規則(案)は(a)文書化と(e)取引当事者間の関係に力点を置いているようだ。

 

  • 2. 財務省規則(案)の概要

 

2-1,    この規則の対象になるのは、基本的には外国企業を含む80%所有グループ(但し負債性一部否認等については、50%基準も盛り込まれている:以下関連グループ)である。

2-2, 文書化条件に於いては、真正の負債であることを形式面、実質面で明確にする事が求められる。具体的には、次の事項に関する証憑書類を適時(一部を除き30日以内を意味しているようである)に作成し、これを保管しておかなければならない。

(i) 法的返済義務等(ii)貸手の権利 (iii) 返済能力(iv)適時の返済、利払いの記録

逆に言えば、こうした条件を満たさない限り、関連グループ構成員間の金銭貸借は、税法上その負債性が否定されることになる。尤も、こうした条件の適用対象は、大規模納税者とされており、その範囲は、凡そ次の通りとなる。

 (i) 構成員の中に上場企業を含む関連グループ、財務諸表上での(ii)資産規模が1億ドル超 及び (iii) 売上げ規模5千万ドル超の企業等が存在する関連グループ

2-3,     今回の財務省規則案の中で、最も注目されなけれならないのは、見做し資本取引条項だ。同規則案に拠れば、次の商行為から生まれた金銭債務は、負債的体裁の有無に拘わらす、株式取引と見做され、派生する支払利息は配当となる。

(i)  関連グループ 構成員に配当を手形等で払う行為(ii)同、株式譲渡の対価を手形等で払う行為 (iii) 同、資産譲渡に拠る組織再編制に際し対価を手形等で払う行為

上記の取引に該当するかどうかの判定は、当該取引の前後3年、即ち6年間の事実関係並びに状況を勘案しておこなうとされる。(但し、当期E&P並びに一定金額等の例外規定有)

 

  • 3. 日本の進出企業への影響

 

唐突に発表されたにも拘わらず、IRSのニュースリリースによれば、この財務省規則案は、早期発効を目指すとのことであり、日本進出企業が、親子間金銭貸借を抜本的に且つ、早期に見直す必要があると思われる。何故なら、例えば、多くの日本の進出企業の親会社が株式市場に上場されていることから、そうした米国子会社は文書化規定の影響を受けることは必至だ。更に、見做し株式取引規定に於いても、例えば、関連グループ会社間の配当の前後3年間で組成された関連グループ会社間金銭貸借は、新規則により株式取引とみなされるリスクを抱えることになる。何れにしても、そのインパクトの大きさからして、新規則案の今後の動向から目が離せない。 

 

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