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海外資産申告の未提出者(非居住者)に対する新しい法令遵守制度 2012/11/04

会計税務情報2012年11月号

永野森田会計士事務所

 

海外資産申告の未提出者(非居住者)に対する新しい法令遵守制度

 

米国政府は、海外に資産を置く申告者に対して、情報開示を厳しく要求している。さる9月1日から、米国歳入庁(IRS)は非居住米国納税者向けの新しい簡便法申告手続き(New Streamlined Filing Compliance Procedures)を発効した。これは、海外居住の米国納税者(アメリカ市民及び永住権者等)の中に、適時に連邦所得税申告書(Federal income tax return)や海外預金口座報告書(Reports of Foreign Bank and Financial Accounts )の提出を、忘れたかそもそも知らなかった等の「軽度の違反者」に対して、法令遵守を促進するための制度である。今月号は、この簡便法申告手続きについて概観してみたい。

 

1. 海外預金口座報告書(FBAR)

 

まず、海外預金口座報告書(Reports of Foreign Bank and Financial Accounts [”FBAR”], Form TD F 90-22.1 http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f90221.pdf)とは、アメリカ市民及び居住者等が、前暦年に$10,000ドル超の海外金融資産を保有した場合に翌年6月30日までに財務省に報告する制度である。故意の違反の場合は、$100,000又は海外金融資産の50%のどちらか大きい金額、故意でなくとも正当な理由がない場合は、$10,000を上限とするのペナルティが課される。FBARについては似た制度であるForm 8938とともに当ニュースレター2011年10月号http://www.nagano-morita.com/news.php?itemid=99&catid=20でも触れている。

 

2. 簡便法手続きの内容

 

今回導入された簡便法手続きは、上記のFBARに関連し、非居住者の米国納税者について軽度のコンプライアンス違反者向けに設計された制度である。FBARの制度を最近知り、法令遵守したいという申告書に対する制度である。提出された書類は全て審査されるが、審査の程度は、コンプライアンス違反の度合いに応じて様々である。軽度のコンプライアンス違反については、迅速に処理され、一般的に罰則や追加措置は伴わないが、違反に重大性が認められる場合、この簡便法手続きでは処理されず、より徹底した審査や本格的な税務調査が実施されることになる。

 

この簡便法手続きを利用する納税者は、適切な関連情報を含む過去3年度分の遅延税務申告書(Delinquent tax returns)と過去6年分の遅延海外預金口座報告書(Delinquent FBAR, Form TD F 90-22.1)を提出することが求められる。発生した税金と遅延利息の支払は、遅延税務申告書の提出時に行う。

 

3. 簡便法手続きの申請適格者

 

この簡便法手続きに於いて、申請適格書の要件は、2009年1月1日以降、米国外に居住し、且つ同期間、税務申告していない米国納税者(アメリカ市民及び永住権者等)で、コンプライアンス違反のレベルが軽度であることが求められる。この制度を通じて修正申告書を提出する場合は、一部の例外を除いて、リスクが高いものと扱われ、税務調査の対象となりうる。つまり、納税者が以前報告したか未申告の所得額や控除額、税額控除額、税額などを訂正するため、修正申告書を提出する場合、この簡便法手続きは利用できない。

 

4. コンプライアンス・リスクの決定

 

米国歳入庁(IRS)は、納税者より提出された税務申告書や質問書などの追加情報に基づきコンプライアンス違反の重要度を決定する。一般的に、重要性がなく、税額が$1,500 未満の税務申告書は、リスクが低いものと扱われ簡便法手続きが適用される。

 

 

コンプライサンス違反のリスクは、以下の状況において高まるとされる。

 

      この制度を通して提出された申告書のいずれかに、還付請求がある場合。

      米国内において重要な経済活動が行われている場合。

      納税者の居住国ですべての所得を申告していない場合。

      納税者が米国歳入庁(IRS)の調査を受けている場合。

      以前、納税者にFBAR の罰則が課されたことがあるか警告の通知を受領したことがある場合。

      納税者がその居住国外に所在する金融口座の持分や権限を保有している場合。

      納税者がその居住国外に所在する企業体の持分(株式等)を保有している場合。

      米国源泉所得がある場合。

      洗練されたタックス・プランニングや租税回避の兆候がみられる場合。

 

今後、こうした新しい制度が導入されたことに鑑み、日本など海外に資産を置く米国居住者は、FBARの申告や、申告をできなかった場合の簡便法手続きの対応について、十分に注意を払って対応して欲しいと考える。

 

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