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2012年米国大統領選挙と税制の行方(個人課税編) 2012/10/04

会計税務情報2012年10月号

永野森田会計士事務所

 

11月6日に迫った米国大統領選挙に向け、いよいよ選挙戦も佳境を迎えている。10月3日にはオバマ大統領とロムニー候補との3回に渡る公開討論会の第1回目が行われた。その中で、税制についても議論が交わされたが、双方とも自身の政策の方が雇用の創出や財政赤字の削減により有効であると抽象的に主張する一方、制度を具体的にどう変更するのか今ひとつ明確ではなかった。今月号では、先月の法人課税に続き、個人課税について、両候補の改正案を比較し、具体的な違いを確認してみたい。

 

1.オバマ大統領とロムニー候補の税制改正案の違い

 

現行の個人課税と各候補者の主な税制改正案をまとめると次のとおりである。

No.

税法トピック

現行

オバマ候補

ロムニー候補

(1)

通常の所得税率

・10%から35%の6段階累進税

・10%か39.6%の6段階累進税率

・8%から28%の6段階累進税率

 

(2)

 

長期譲渡所得及び配当課税

 

・長期譲渡所得は、原則15%の分離課税

・一定の配当は原則15%の分離課税

 

・高所得層の長期譲渡所得は20%

・高所得層の配当所得は通常の所得として課税

 

 

・所得が20万ドル未満の世帯の投資にかかわる所得は非課税

・長期譲渡所得、配当に対する15%の分離課税を維持

 

(3)

 

遺産税(Estate Tax)

・基礎控除512万ドル

・基礎控除を超える金額について35%の課税

・基礎控除350万ドル

・基礎控除を超える金額について45%の課税

・Estate Taxの廃止

 

(1) 所得税率等の改正

 

個人所得の税率については、両氏ともに6段階の累進税率構造は維持しているものの、提案されている税率には大きな違いがある。オバマ大統領が特に共和党との違いを強調し重視しているのが高所得者への増税である。具体的には、ブッシュ政権下で施行され継続されている中・低所得層への減税はそのまま延長することを提案している。一方、高所得層への減税は廃止とし、夫婦合算所得が$217,450以上(単身者は$178,650以上)の所得に対する税率は 現行の33%から35%に引き上げ、更に夫婦合算および単身者の所得が$388,350 以上の場合は、現行の税率36%から39.6%まで引き上げる提案をしている。対するロムニー候補は、税金はより少ない方が経済活性化に有効であるとの立場から、所得の多寡にかかわらずブッシュ減税政策をそのまま延長し、加えて税率を20%引き下げる提案をしている。高所得部分だけを対比するとオバマ候補39.6%、ロムニー候補28%と税率に10%以上の差があり、大きな政策の対立点と言える。

 

 

(2) 長期譲渡所得、配当課税の改正

 

長期譲渡所得、配当課税に関して両氏は正反対の政策を提案している。オバマ大統領は現行の長期譲渡所得および配当に対する減税策を予定どおり2012年末に失効させるとしている。そして、高所得者の長期譲渡所得については分離課税を維持するものの最高税率を15%から20%に引き上げることを提案している。また、高所得者の配当所得については現行の分離課税15%から総合課税とし通常の所得税率を適用する提案をしており、その場合最高税率は39.6%となる。対するロムニー候補は、所得が20万ドル未満の世帯の長期譲渡所得および配当に対しての課税の廃止を提案し、また所得が20万ドル以上の世帯には現行税率を維持し15%の分離課税を行うとしている。

 

(3)  遺産税の改正

 

遺産税ついても、両氏の提案は真っ向から対立している。オバマ大統領は基礎控除を現行の512万ドルから350万ドルに引き下げるとともに、基礎控除を超える課税対象額に対しては、最高税率を35%から45%へと引き上げた課税を提案している。反対にロムニー候補は、政府は同じ所得に対して生前と死後に渡り何度も課税するべきではないとの立場から、遺産税の全面廃止案を提示している。

 

 

2.政策対立の影響

 

両候補の租税政策には以上のように大きな対立点がある。加えて議会の民主党・共和党の勢力バランスも影響して、今年末に失効するブッシュ前政権時代の減税をどの程度どのように継続させるかの合意が形成できない状態が続いている。共和党・民主党とも急激な税負担の増加は避けたいと考えているものの、このままブッシュ減税が何らの手当もないまま失効した場合相当な増税となり、赤字削減のための連邦予算の強制削減の発動と相まって2013年早々からアメリカ経済が財政の崖(Fiscal Cliff)を転げ落ち景気後退に陥ると危惧されている。

 

さらに同じような理由から、2011年末若しくは2012年の年度中に失効した租税特別措置等に関して2012年中に復活させるのか否かの決定も大統領選挙後にならざるを得ないと考えられている。このことは2012年度所得の確定申告に際し適用すべき法令が定まらないことを意味し、米国内国歳入庁(IRS)は、大統領選挙後の税制改正がずれ込んだ場合、来年1月半ばから始まり4月15日が期限となっている個人税務申告のプロセスおよび税還付が遅れる可能性があるとの見方を示している。

 

大統領選の結果は、我々個人の納税額に大なり小なりのインパクトを与えるのは間違いなく、残り1ヶ月を切った大統領及び議会選挙の行方に注目していきたい。

 

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