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移転価格ドキュメント作成現場より-CPM法を使用する場合のポイント 2012/04/04

会計税務情報 2012年4月号

永野森田会計士事務所

 

移転価格ドキュメント作成現場より-CPM法を使用する場合のポイント

 

日系企業が米国にて事業を行う際に注意しなければならない税務事項の一つに移転価格税制がある。諸国間にて法人税率が異なる状況において、多国籍企業は税率が低い国に設置したグループ企業に課税所得を集中させることで、グループ全体の実効税率を抑えることができる。しかし、こうした試みが税務上許されるかは、各国の税務当局の視点からグループ内関連者間取引を吟味した場合、当該取引が独立企業間原則(Arm’s Length Principle)に適っているか否かによる。移転価格税制は、米国歳入法第482条の下、成文化されており、同条に関連する米国財務省規則は、IRSが独立企業間原則を行政上どのように運用していくか明記している。今月号は、こうしたことに準備される企業の移転価格ドキュメンテーションを中心とする説明を行うこととする。

 

1.移転価格ドキュメントとは

 

周知の通り、現在米国の法人税率は全先進国中最高水準にあるため、グループ内利益をアメリカ国外に持ち出そうとする試みが絶えない。これに対応して、IRSは不当な所得移転に対する罰則を強化してきた(詳細については、2011年6月号を参照されたい)。この結果、海外企業と関連者間取引を行う米国企業では、IRSの税務調査に備えて、米国財務省規則が定めた手法に基づいて、当該関連者間取引が独立企業間の原則に則っている事実を確認し、その確認過程並びに結果を文書化することが一般化している。移転価格ドキュメントとは、この文書化規定を満たす目的で米国企業が毎年法人税申告書提出期限までに用意するドキュメントを指す。

 

ところで、関連者間取引が独立企業間の原則に則っている場合とは、当該取引が非関連者相手に行われた場合と同一の条件の下行われている場合である。移転価格ドキュメントでは、検証対象取引が同原則に則っていることを証明するため、①米国財務省規則が定める複数の確認手法のうちいずれを用いるのが最適と考えられるか、②当該最適手法を用いた検証結果の2点につき考察が行われる。

 

2.取引自体に着目した確認手法

 

独立企業間の原則を満たしている事実を一番証明しやすいのは、同一の製品・サービスがグループ内外の企業に売られている場合である。海外親会社の製品を再販している米国子会社の場合、子会社の買値と非関連者の買値を比較する。製品やや条件等につき、取引間に多少の差異がある場合は、取引値を直接比較することはできないが、製品の再販を通じての売上総利益率(Gross Profit)を比較に用いることができる。

 

3.何故CPM法が多用されるのか

 

このように、グループ製品をグループ内外の企業に卸している場合は、非関連者への取引をベンチマークに用い、独立企業間の原則に適っているかを検証することは可能である。しかし、製品をグループ外の企業に卸していないケースが大半であり、そのような場合は、取引単位でその取引値又は再販時の利益率の妥当性を判断する手法に代えて、類似企業との営業利益率を比較するCPM(Comparable Profits Method)法が用いられる。CPM法により、ベンチマークになりうる取引が存在しない場合でも、独立企業間の原則に適っているか否か客観的な検証が可能になる。

 

CPM法では、検証対象企業と機能、リスク等の観点から類似していると目される公開企業を、比較対象会社(Comparables)として抽出する。CPM法では、検証対象企業が関連者間取引を通じて計上した営業利益率が、比較対象会社の営業利益率と同等以上であった場合に、独立企業間の原則に適っていたと結論付ける。CPM法は、多くの企業にとって米国移転価格税制への遵守を証明する唯一の選択手段である。しかしながら、取引に着目してその価格、粗利等を直接比較する手法と異なり、規模も取扱い製品・サービスも多分に異なる米国公開会社の業績に大きな影響を受けるという点で、多大な不確定要素を含んでいるのも事実である。

 

4.CPM法の下の利益の具体的な比較方法

 

CPM法の下、検証対象企業並びに比較対象会社の利益を実際に比較する際、一般には、減損会計処理、組織変更、リストラ、無形資産の償却、確定給付型年金に関る一部のコスト等に関る経費は考慮されない。このような、一時的に発生したコストや、本来のビジネスに直接関わらないコストを排除することで、各企業が本来の事業から得た利益を比較することが可能になる。こうした調整は、移転価格スタディの結果に大きな影響を与える。例えば、比較対象会社に減損会計処理のため巨額の費用が発生しているような場合であっても、移転価格上はその減損処理から発生した費用は、当該比較対象会社の会社の利益率を押し下げない。つまり、CPMの下、利益を比較する際に用いる数値は、年次決算開示様式(10-K-米国版有価証券報告書)にて報告される財務諸表の数値とは異なる。また、検証対象企業についても、財務諸表の数値がそのまま用いられるとは限らない。

 

CPM法の下、利益を比較する際、どのような調整を財務諸表の数値に加えるかについては、米国財務省規則1.482-5(c)(2)(iv)並びに1.482-1(d)(2)に一定の指針が与えられているが、調整についての具体的な例は示されていない。そのため、専門家の間でも、統一された詳細なルールは共有されていない。しかし、少なくとIRSの税務調査があったときに説明のつく数値調整でなければ、せっかく行った移転価格の文書化がその目的を果たさない結果になる可能性がある。CPMによる移転価格ドキュメント作成を専門家に依頼した場合には、どのような調整が財務諸表に加えられのたか確認されることをお勧めしたい。また、10-Kにて報告された営業利益と、移転価格に用いるため調整された後の営業利益を比べたReconciliation Scheduleを依頼した専門家から入手することも有用である。

 

※移転価格studyに関するご相談等については、弊事務所Los Angeles Office河村(213-830-6610)までご連絡下さい。
 

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更新日: 2012年04月04日

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