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不動産投資と税務申告 EB-5永住権プログラム 2012/03/04

会計税務情報 2012年3月号

永野森田米国公認会計士事務所

 

不動産投資と税務申告 EB-5永住権プログラム

 

EB-5 プログラムとは、米国内に一定額以上の投資を行うことで、米国永住権を取得することができる米国政府の移民ビザプログラムである。審査期間が雇用を基礎とした移民ビザよりも一般に短いといわれており、リーマンショック以降の円高もあって、この制度を利用して永住権を取得した日本人も増加しているようである。今月は、このEB-5による永住権を取得した場合に、注意する税務上のポイントについて解説する。

 

1.Schedule K-1

EB-5 では主にリミッテッドパートナーシップ(LP)と呼ばれる法人形態に投資という形を取ることが多く、投資する方はその法人のリミッテッドパートナーとなる。 LP は少なくとも一人または一法人以上のジェネラルパートナーとリミッテッドパートナーから成り立ち、ジェネラルパートナーはLPの経営に関与し、LPに対する全責任を負うのに対し、リミッテッドパートナーの責任はあくまでも投資額に制限されるというものである。LPに投資した場合、LPの損益のうち、自身の損益分配の割合に応じた損益がSchedule K-1 というFormにて毎年報告されることとなる。これを受け取った投資者は、自身の確定申告書であるForm 1040の Schedule E等 にてその損益を報告する必要が生じる。
 

例:LP の年間収支が賃貸収支(ネット)で、$100,000、 損益分配割合が1% であったとすると、Schedule K-1 には、$1,000 のNet Rent Income が報告され、それを受け取った投資家は、実際に現金を受け取ったか否かに関わらず、自身のForm 1040 Schedule E にて$1,000 の賃貸所得を申告する。

Schedule K-1の実際のフォームのリンク: http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f1065sk1.pdf

 

2.永住権取得による米国居住者扱いの開始

日本在住の日本国籍の方が、EB-5等で永住権を取得した場合、米国税務の上で、非居住者→居住者への変化が起きる。当然ながら、この影響を考慮するべきである。まず、居住者扱いの開始であるが、日本在住の日本国籍の方(米国滞在がなく、Substantial Presence Testによって米国税法上居住者とならない方)である場合、永住権を取得して最初に米国に入国した時点から米国居住者となる(Green Card Test, IRC 7701(b)(2)(A)(ii))。それ以降については、永住権を放棄するまでは、米国税法上居住者となり、全世界の所得が報告対象となる。特に、日本で課税上の優遇措置を受ける、退職金、年金などについても、米国で課税対象となるため、その影響も十分に考慮に入れる必要がある。
 

例: 永住権取得後、米国に渡米した後に、日本の元勤務先からの退職金を受け取った。この場合、退職金は米国源泉所得ではないが、米国居住者(全世界所得を報告する立場)であるため、米国にて課税対象となる。

 

3.米国税法上の居住者になる場合、特に注意するべき報告義務

(1)FBAR (Treasury Department Form 90-22.1)

米国外にある金融資産を報告するフォームで、合計残高が$10,000を超える場合は、米国財務省まで毎年6月30日までに申告する。これを怠ると、ペナルティは$10,000 /違反となっており、意図的な未報告の場合は、残高の50% /年のペナルティや刑法上の罰則にも発展する可能性がある。
 

(2)IRS Form 8938

2011年の申告書から適用されたフォームで、(1)と同じく米国外金融資産を報告するが、こちらは確定申告書に添付し、申告が必要な残高は、米国でのファイリングステータスと米国に居住しているかなどによって異なる。(例: 米国居住の独身者は、年末の残高で$50,000、または期中の残高で$75,000 を超える場合など)

Form 8938 を申告書の期限(延長を含む)までに提出しない場合、そのペナルティは$10,000 となっている。(詳細については、弊所ニュースレター2011年10月号参照。)

 

(3)IRS Form 5471

米国外の会社の株式を10%以上持つ場合、Form 5471を確定申告書に添付し、その会社の情報を開示する必要がある。この報告を申告書の期限(延長申請を含む)までに提出しない場合、そのペナルティは$10,000 となっている。
 

例: 日本の会社を10%以上持つ方が永住権を取得し、米国に居住した場合、Form 5471の報告義務が生じる。
 

(4)IRS Form 8621

米国外のMutual Fund (投資信託)に投資している場合などで、投資先がPFIC (Passive Foreign Investment Company)に該当するときは、一定の場合Form 8621を確定申告書に添付し、当該投資を報告する。
 

(5)IRS Form 3520

米国非居住者から一定額以上の財産の贈与、相続を受けた場合、Form 3520 にて報告義務が生じる。この報告を所得税又は相続税の申告期限(延長を含む)までに確定申告書とは別に指定されたIRSセンターに提出しない場合、そのペナルティは$10,000 または、贈与、相続額の5% のいずれか大きい方等となっている。

 

4.結論

上記のように、投資によるEB-5プログラム等で米国永住権を得て、米国に移住する場合、様々な税務上の留意点が生じる。特に、米国税務上、米国非居住者→米国居住者となる際に、税務上の問題点、または将来に対する影響などを十分考慮する必要があるといえる。後に、「知らなかった・・・」ということにならないように、事前に専門家に相談することを推奨したい。

 

なお、EB-5プログラムは時限立法であり、現在のところ2012年9月末で終了することになっている。しかし、このプログラムは、導入された1993年以来何度も延長されており、最近の延長は2009年に行われた。現在、議会では、時限立法でなく恒久化する案も検討されている。詳細な情報についてはEB-5プログラムに詳しい移民弁護士等に確認されたい。
 

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更新日: 2012年03月04日

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