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    買収・合併の新会計基準(SFAS 141(R))

    会計税務情報2008年8月号
    永野森田会計士事務所


    買収・合併の新会計基準(SFAS 141(R))


    現在の米国における買収、合併に伴う連結会計基準は、2001年に導入された米国会計基準SFAS141に準拠している。この基準により、それまで連結会計の骨格的存在であった「プーリング法」は否定され、原則として「パーチェス法」のみを公認するという大きな役割を果たした。然し、買収、合併は極めて複雑且つ変化に富んだ事象である。そのため、こうした現在の枠組みでは、正確に取引の実態を反映できないとする批判もあった。そこで、同規則の改訂版として、2007年12月にSFAS141(R)が発効され、同新基準は2009年からの適用となった。本稿に於いては、今回のこの改変のポイントとその背後にある問題意識を考察したい。


    1. 少数株主会計の国際基準との統一


    USGAAP(米国会計基準)とIFRS(国際会計基準)との相違の一つとして、少数株主の持分に対する考えの違いがある。USGAAPでは、これをBS上負債と認識するのに対し、IFRSは資本の一部という立場を取ってきた。今回の改訂により、少数株主持分は資本の一部となり、USGAAPは国際基準に歩み寄る形になった。


    2. 買収費用の費用化


    買収、合併は、その実現までに多額の費用を伴うことは珍しくない。現在の会計法では、こうした買収関連の直接、間接の費用については、買収価格に合算し、通常は暖簾(のれん)代として資産計上することになっている。この点について、買収交渉費用は必要不可避である点で異論はないものの、買収資産の価値との関連性を認めないとする意見がこれまで優勢を占めてきた。これを反映して、新基準に於いては、買収に至るまでの事前交渉費用については、発生時点で費用計上する事となった。


    3. 合併差益


    JPモルガンのベアスターン買収で世間の注目を集めたバーゲンパーチェス(取得資産が売買価格を上回るケース)に於いては、現在は取得資産を差額分圧縮することになっている。この方法は、取得資産の公正価値を反映していないとの批判があり、取得資産を公正価値で認識するとともに、差額分を当期の利益として認識することになった。尤も、数多くある買収劇の中で、ベアスターンのような事例は稀である。


    4. 偶発的対価


    買収側の思惑と、非買収側の思惑は必ずしも一致しない為、買収価格決定が困難な場合がある。この両者の思惑のズレを解消する方法として用いられるのが成功報酬的な発想である偶発的対価(Contingent Payment)であり、頻繁に利用されている。現在の会計原則においては、結合時点では確定対価のみを計上し、その後、追加的対価の支払いが起る毎に、暖簾勘定に上乗せするという原則的立場をとってきた。新基準では、将来の偶発的対価を予測することで、結合時点での取得資産の公正価値を最大限正しく反映しようとの試みが採用されている。その後、偶発要因が解消される迄、関連資産が再評価され、公正価値との差額は損益計算に吸収される。


    5. 研究開発費


    所謂R&Dに対する現在の考えは、資産性を認めず、結合時点に費用化しなければならないこととなっている。然し、R&Dが買収の動機として働くことは十分に考えられることであり、これを無条件に費用化することへの批判はこれまで多かった。これに対して、新基準は、結合時点ではR&D費用を無形資産として認識させ、研究開発が完結した時点で、改めて資産性を判定することとした。


    最近のUSGAAPの変化の背景には、国際基準への同化と取得原価主義からの脱皮があると言われるが、今回のSFAS141(R)は、正にその説の正当性を証明するかの感がある。


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    更新日: 2008年08月07日

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