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    日本版SOX法概説(1)~日本版SOX法導入の夜明け

    会計税務情報2006年11月号
    永野森田会計士事務所


    日本版SOX法概説(1)~日本版SOX法導入の夜明け


    日本の書店では、「日本版SOX法」や「内部統制」と題される解説本が山積みとなって並んでいる。企業の内部統制の強化を図る目的から、経営者が企業グループの財務報告に係わる内部統制の評価をする新ルールを、2008年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることになったからである。根拠法となる金融商品取引法は、米国SOX法404条(Sarbanes-Oxley Act section 404)と同様に、日本企業に対しても内部統制報告書の提出とともに監査証明を義務付けるという内容を含んでおり、これを総じて「日本版SOX法」とも言われている。その具体的なガイドラインとなる「実施基準」の公表は、近々年内に出ると予想されている。これらにより上場・公開している日本親会社とともに米国子会社も、内部統制の文書化、その明確化は余儀なくされてくる。今回は、この論議となっている日本版SOX法が導入されることに至った背景について、ポイント的に解説することとする。


    1 米国SOX法の推移


     米国SOX法の始まりは、2001年12月の米エンロン社の粉飾決算による経営破綻にありました。2000年には売上高で全米7位という社会的ステータスの高い巨大企業が、一瞬にして市場から消え去りました。特に問題となったのは、会計監査人が不正を発見できなかったのみならず、会計監査人自身が粉飾決算の隠蔽工作に加担していた疑いがあったことにありました。


     大きなショックを受けた米国世論および米政府は、企業不正を防止し、市場の信頼性を取り戻す観点から、監査法人の監督や独立性の強化、会社代表者の責任・罰則強化など、企業の財務報告を適切なものとするための一連の制度改革を行いました。それがSOX法の導入であり、法案検討から大統領署名まで約1週間のスピード成立をみても、当時の注目度を伺い知ることが出来ます。


     公開企業にとって重要となるのはSOX法の404条であり、経営者に自社の内部統制を評価した報告書を作成させ、会計監査人の監査を受けることを義務づけたという点です。然しながらこの404条の適用は、公開企業にとってコスト・マンパワー面で負担が重く圧し掛かったため、SOX法が導入され3年経た現在でも、早期適用対象とされた時価総額75百万ドル以上の公開企業(全体の2割程度)しか内部統制報告書を作成しておらず、他の企業については適用がたびたび延期されてきました。そうした現状を踏え、内部統制の評価に関するガイドラインのみならず、内部統制の監査基準についても全面的に見直すことが決められており、米国SOX法は導入3年目にして「制度全体が揺れ動いている」とまで指摘されています。


    2 日本の会社法および金融商品取引法の成立


     一方日本では、2002年に米国でSOX法が成立した直後においても、西武鉄道事件やカネボウ粉飾決算事件、ライブドア事件など情報開示・ディスクロージャー制度の信頼性を損なう事件が多発しました。こうした事態を受けて、日本でも内部統制の議論が活発になり、法制化の動きに拍車がかかりました。
     
     2006年5月に成立した「会社法」はその一つであります。旧商法を廃止し、その代わりに時代の要請に応えたコーポレートガバナンスを強化するために設けられた新しい法律であります。この中では、大会社(最終事業年度のB/S上の資本金の額が5億円以上、又は負債総額が200億円以上の株式会社)については「内部統制システムの構築義務」を課し、「取締役会で決議する」「事業報告で開示する」ことを定めました。また、これを「親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正性を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)として、対象範囲はグループ全体を含むものとし、海外子会社をも含むという厳しい内容となりました。


     もう一つが、2006年6月に証券取引法を改正する形で成立した「金融商品取引法」であります。同法は、従来の証券取引法に代わるものとして、守備範囲はとても広いものでありますが、その一部として内部統制報告書の提出および監査証明の義務を明記しており、米国SOX法404条とほぼ同様の規定を導入しております。従いまして、この部分を「日本版SOX法」と呼ぶ所以となったわけであります。ここでも、内部統制の対象となる財務報告は連結企業グループとなっており、連結決算上重要な海外子会社については、同法に基づく内部統制評価の対象となってきます。
     
     このように2つの法律は、制度趣旨と適用対象(会社法は「大企業」、金融商品取引法は「公開企業」)が異なる別個の法律でありますが、実務上は、両法律に対して内部統制評価のフレームワーク(内部統制の標準の考え方)として、米国版COSOモデル(The Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)を使用しており、企業側にとっては「結果的に同じになった」と指摘されることになりそうです。


     何れにしても、日本で上場・公開している親会社を持つ多くの米国子会社にとっては、今後、米国内の法律のみならず、日本国内の法律への対応も必須となってきます。すなわち、年内に発表予定である日本の金融商品取引法における内部統制評価の実務指針の動向を踏まえつつ、かつ米国内での内部統制評価の実務も理解しながら、各種リスク・コントロールの把握と評価を行える体制を、企業として早急に整備していくことが重要課題になると言えます。


    「(1)~日本版SOX法導入の夜明け」 完。                  
    次回は、「(2)~日本版SOX法の実務」を予定。

    更新日: 2006年11月03日

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