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    1120-F の提出義務及び租税条約に基づき申告する場合の開示義務

    会計税務情報2006 年3 月号
    永野森田米国公認会計士事務所


    1120-F の提出義務及び租税条約に基づき申告する場合の開示義務


    日本企業が支店等を通し米国にて活動する場合、また米国より収入を得た場合には原則的に米国に対し法人税の申告・納税義務が生じます。また、申告の際に租税条約に基づく立場を取った場合、条約に基づく申告である旨の開示が必要になる事もあります。今回は、米国に対する法人税申告義務、租税条約に関しての開示義務について触れます。


    1. 外国企業は通常以下の状況下において法人税申告書(Form 1120-F)の提出が必要となります。


    (a) 米国における収入の有無に関わらず、米国において活動をしている場合(engaged in a trade or business)。米国に支店、駐在員事務所、その他の事業所を有していれば活動していると見なされる。


    (b) 米国において活動をしていなくとも(not engaged in a trade or business)、FIRPTA で指定された収入がある(例:不動産による賃貸収入があり、その収入に対し、net base で確定申告している場合。不動産譲渡による譲渡益がある場合。FIRPTA 税制において、USRPI と目される資産を譲渡し、譲渡益がある場合)。〈注1 〉


    (c) 米国から、FDAP (Fixed, Determinable, Annual or Periodical)収入を受け取った場合。〈注2 〉


    〈注1 〉賃貸収入のnet base での申告については、IRC Sec. 882(d) を、また、FIRPTA については、IRC Sec. 897 を参照下さい。
    〈注2 〉FDAP 収入の代表的なものは、利息、配当、使用料です。


    2. 米国において、何ら活動をしておらず(not engaged in a trade or business)、FDAP 収入のみ受け取った場合には、Form 1120-F の提出が免除される場合があります。詳細は以下の通りです。


    (a) 外国企業に支払われたFDAP 収入に関し、その支払人が、規定の税率でもって源泉徴収(1042 withholding)を施していた場合は、外国企業はForm 1120-F を提出する必要無し。


    (b) 然しながら、租税条約を用いる事により源泉徴収が免除された場合(例:使用料や、株式保有率50 %超の親会社に対する配当)には、納税額が無くてもForm 1120-F の提出が義務付けられている。上記(b)の理由により、1120-F の提出が必要になった場合には、納税者は名前、住所、ID ナンバー、及び申告書中のItem U のみ記入します。


    3. 申告義務に加え、特に以下のケースに当てはまる場合には、租税条約に基づく立場(Treaty-Based Return Position)の開示が必要とされています。この場合、Form 8833 を申告書に添付し提出します。ここでは、日本企業が租税条約に基づく立場を取ったと想定し、説明します。


    多くの日本企業に当てはまるケース


    (a) 日米租税条約第10 条(配当所得)の第9 項を用い、支店利益税(Branch Profit Tax)の適用免除を受ける場合。


    (b) 日本企業が、株式保有率が50%超の米国子会社よりFDAP 所得を受け取り、尚且つ、その所得の合計が50 万ドルを超える場合。


    (c) 日本企業が、株式保有率が10%超の米国子会社より、配当を受け取った場合。


    (d) 米国での活動から派生する所得(ECI)がありながらも、日米租税条約第7 条(事業所得)の第1 項を用いて、非課税の扱い受ける場合。


    (例)日本の株式会社であるA 社は、家庭電化製品の製造・販売業者であるが、米国西海岸における家電マーケットに参入を目指し、カリフォルニア州ロサンゼルス市に倉庫を借り、在庫を保有している。営業は現地のエージェントが行い、顧客への配達には運送業者を用いている。米国内法に鑑みると、同国内における在庫の存在や代理人を利用しての継続的な販売行為を通じ、A 社は米国で業務活動を行っていると見なされ、同社製品の米国内での売上げは米国収入として扱われる。しかしながら、日米租税条約では、米国内に恒久的施設を有しない限り、日本企業は米国により課税されないとされているため、A 社の納税義務は発生しない(租税条約上、在庫も独立代理人も恒久的施設とは見なされない。)。


    (e) 日本企業が、株式保有率が25%超の米国子会社よりFDAP 所得を受け取り、<u>尚且つ、その所得がForm 1042S において報告されていない場合</u>。


    尚、上記(b), (c)のケースでは、本来1120-F の提出が義務付けられていない場合も考えられますが、Treaty-Based Return Position を開示するため、1120-F の提出は必要となります。


    やや稀なケース


    (a) 無差別取り扱い条項(日米租税条約においては、第24 条に相当)を引用し、IRC に定められた米国内法の適用免除を受ける場合(例:旧日米租税条約の下で支店利益税を回避するために無差別取り扱い条項を引用していたのが、代表的事例と言える)。


    (b) 日米租税条約第11 条(利子所得)の第10 項を用い、IRC で定められた支店利子税率(Branch-level Interest Tax)を減率する場合。


    (c) 日米租税条約第10 条(配当所得)の第9 項を用い、配当に関わる第2 次源泉税(IRC Sec. 861(a)(2)(B) の規定による)の免除を受ける場合。


    (d) 日本企業が、米国より利息収入を受け取り、日米租税条約の適用により、源泉徴収が免除された場合。


    (e) 租税条約を用い、米国源泉所得を外国源泉所得にすり替える場合。


    (f) 米国内に保有する恒久的施設の課税所得を計算する上で、控除額を米国内法に基づいてではなく、日米租税条約第7 条(事業所得)の第3 項に従い算出した場合。

    更新日: 2006年03月14日

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