会計税務情報2003年9月号
永野森田公認会計士事務所
高騰する医療保険
-求められる医療保険への意識改革-
年率2桁台の保険料率上昇が蔓延する医療保険の現状を、今、産業界では危機的状況と受け止めています。企業規模を問わず、平均的高騰率は12%-15%に達し、30%の値上げを経験している会社も少なくありません。 2002年の全米平均は12.7%でしたが、これを1999年の同4.8%に比べると、その異常振りが浮き彫りとなります。多くの日系企業にとっても、今,真剣な対応が求められています。
1、何故、保険は高くなるのでしょう。
色々と指摘される中で、主な原因としては、次の2つが考えられます。
まず、団塊の世代といわれる戦後のベビーブーマーが50台に突入したこと。年齢が進むと共に、比例して医療に頼る機会が増えていくのは自然の成り行きで、50台ともなれば、以前に比べて病院に通う頻度がグーンと増えるので、医療費が膨らみ、保険に皺寄せが来たとしも不思議はありません。その第2は、高価な処方薬利用の高まりと言われています。最近の医薬品開発には、目覚しいものがあり、以前は不可能と思われていた難病も克服されつつあります。例えば、痛風、関節炎の類に効く、Vioxxや、子宮ガン予防ワクチン Merck等々がそれで、そうした、高価な医薬品が医療現場で数多く投入されればされる程、治療費は増え、そのつけは、保険に跳ね返ってくるわけです。保険会社によれば、保険料値上げ理由の3分の1が、これに帰すると言われています。高度な医療器械投資が、現代医療には不可欠で、その償却負担が増えていることも看過できない理由と言えるでしょう。
2、企業側の対策
保険料の負担が増えたとしても、福利厚生の大黒柱ともいえる医療保険制度を廃止することはできません。様々な理由から、政府に援助を求めたり、保険会社がある程度の緩衝材になってくれることや、医療提供側である、医者や病院に医療報酬の引き下げを期待しても、無意味でしょう。ならば、保険料負担の増大を負担と感じる企業にとって出来ることは、保険料増大を抑制する為の何らかの策を練ることしかありません。その一つは、医療保険の限界的分野である歯科、眼科保険の廃止、その二は、日常的病気診療費の利用者負担増であり、その根底には医療保険に対する意識改革という、共通のテーマが横たわっていることを、見逃すことが出来ません。
(a) 企業の従業員にとっての最大の関心事は、命に関わる医療保険であることは、想像するに難くありません。 Dental, Visionの分野は元々利用者負担率が高い上、保険限度も低く抑えられているので、これを撤廃し、当該コストを医療保険に振り向けてもそのインパクトは限界的であることが想像されます。
(b) 医療保険は、あくまで保険であることを再認識する必要があります。保険は偶然起こるかも知れない将来の危険への備えであり、日常的に反復されるものではありません。日常的な病気は、最早、保険の対象外で、これからの医療保険は、火災保険や地震保険と同じく、大手術や長期入院等への備えであるとの頭の切り替えが必要でしょう。
更新日: 2003年09月01日

