会計税務情報
2002年8月号
永野森田公認会計士事務所
アメリカの中のタックスヘブン
今では、少し色褪せた存在となったタックスヘブンが、オフショアでなくて、実は、アメリカの中にあるという話です。ケーマン、パナマ、バハマなど、税金の無い国に会社を作り、そこに利息や配当などの所得をプールして税金を回避するこの手法は、1960年の前半まで大いにもてはやされました。然し、SubPart F Income税法の導入以来、こうした節税方法は実際上使えなくなってしまいました。と言うのは、外国籍企業の株式5%以上を持つアメリカ市民や居住者は原則として投資先の会社の財務内容を報告しなければなりません。更に、10%株主については、相手国税率がアメリカの税率の9割以下の場合、低率課税国(タックスへブン)とされ、プールされた利益は、実際に配賦されるか否かに拘わらず、アメリカ国内所得と合算しなければならないからです。
数多くのNY 証券取引所上場企業が本店所在地と定めるデラウエアー州の魅力は、単に会社法体系が整備されているだけではありません。この州には法人税も所得税もありますが、投資会社や持ち株会社への課税を免除するという特殊な政策を採っています。そこで、多くの企業が、デラウエアー州に商標権に代表される知的所有権のみを保有する持ち株会社や投資会社を設立、他の州で営業活動をする子会社は、デラウエアー法人に対し、ライセンス料を払う仕組みを取っています。例えば、おもちゃで有名なToys"R"US社は、米国全州の小売店舗網で得た営業利益の中から、数百万ドル単位のライセンス料をデラウエアー州の本社に支払っています。Limited Brands社はVictoria SecretやBath & Bodyといった有名ブランド名使用料として数千万ドルの金をアメリカ全土に張り巡らされた数千の店舗から集金しているといわれています。このようにして集められた金はデラウエアーでは無税なのです。つまり、タックスヘブンなのです。
同様の手法で、州税を回避している会社として、Home Depot, Kmart, Gap, Circuit City, Staples, Burger King等が名を連ねています。タックスヘブン州としては、他にもネバダ、ワシントン等、所得税そのものを排除している所もあり、そうした州への金の流入が増え続けていると言われています。事実、近年の州税の目減り傾向は、統計にはっきりと反映されています。上のグラフは、州法人平均税率を示したものですが、かって9%程度だった企業の課税所得に占める平均州税率が5%強にまで落ち込んでいる様子が分かります。
税負担衡平の見地から、多くの関係者がこれを問題としており、何れ、事態改善のメスが入るかもしれません。然し、それまでは、合法的節税を求めて、アメリカの中のタックスへブンに集まる企業の数は増え続けることでしょう。
更新日: 2002年08月01日

